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静かな夜 2

 功祐は通信機の光を頼りにして長めの枝と細い枝を何本か拾い、拓也にわたした。

 そして更に武器である短剣を取り出して、木の幹の一部を切り取る。

「これで、あとは……」

 そこで功祐は少し考え始めた。

 だがそれもほんの少しの間だけで、すぐに行動に移す。

 功祐はブーツの靴紐を靴から外して手早く太い枝に括り付ける。

 弓のようなものが出来上がると弓の弦に細い枝をねじりながら通してそれの先を短剣で削り落とし、尖らせた。

「……おー。これ野外学習で使ったことある奴だ」

 拓也の言葉を聞いた功祐はそれを拓也に押し付けた。

「じゃあ、拓也やれよ」

「え!? 何でだよ」

「疲れる」

「……いや、俺も疲れるしさ」

「拓也」

 茜の静かな声が聞こえて拓也はしぶしぶ弓を木の幹に押し当てて上下に動かした。


 火が付き始めたのは四十分ほどたった頃だった。

 それを見計らって功祐は近くに落ちていた木の葉に火を移す。

 功祐が慣れた手つきでたき火を作っていき、すぐに火は強くなった。

「だあー、つっかれた……」

 拓也は腰を下ろす。

「まあ、二回目なんだったら早い方だと思うけど?」

「つーかさ」

 功祐の言葉に凌が口を挟んだ。

「功祐、結構慣れてない?」

「どういうこと?」

「なんつーか、こういう状況に置かれてもあんまり動じてないし、武器も普通に扱えてるし、火の起こし方も知ってるし」

「それは俺が短剣だからってことだろ。火の起こし方を知ってるのはしょっちゅうキャンプに行くから。俺が冷静に行動してるように見えるのはこの建物に来てからお前らに会うまでに時間があったから」

 功祐は肩をすくめる。

「へえ、そうなのか」

「この話は置いといてさ、早く寝ないと。どうせ明日も他の部屋に行くんだろ?」

「そうね……」

「友莉も顔色悪いみたいだし」

 功祐の言葉に友莉がピクッと反応する。

「え、友莉、体調悪いの?」

 茜が心配そうに顔を覗き込むと友莉は慌てて首を横に振った。

「ううん。ちょっと疲れただけ」

「……そう。どちらにしろ早く休んだ方がいいわね」

「俺は火の番してるわ」

「それは悪いよ」

 功祐が大した問題でもないというように火の番をしようとするが、明日香がそれを嫌がった。

「せっかくなんだし、皆で交代でしようよ」

「うーん、それもそうだな。かといってホイホイ交代してたら他のやつも気になって寝付けないし、今日は男子が番をしよう」

「「えー」」

「文句言うな」

「じゃあ、明日は女子ね」

「おう。最初俺が起きてるから……」

 功祐はチラと通信機の画面を見てから話を続ける。

「今、十二時だから……。ちょっと早めに起きるとして、五時か?」

「早すぎ!!」

「……」

 拓也の言葉に功祐がうんざりする。

「……じゃあ、六時な。で、二時間交代」

「了解」

「俺、凌、拓也の順でいいか?」

「ん。いいぞ」

「俺も」

 二人が同意したのを見てから茜は火の前に横になった。

 その隣に明日香と友莉が寝そべる。

 友莉は火の熱が伝わっていないようにも見えるが。

「じゃあ、よろしく」

「ああ」

 男子二人もすぐに横になった。

 少しすると疲れていたこともあってか、静かになった。

 功祐はため息を吐いて胸ポケットの中に入っていた少し大きなボタンのようなものを耳にあててみる。

「……反応なしですか」

 ぼやいてから再びそれをポケットに戻して天井を仰いだ。

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