戦闘開始 4
ガサガサッと言う音がして、拓也たちから少し離れた前方に合成生物が現れた。
それとほぼ同時に四人はもといた場所へと走った。
「友莉と明日香は左、俺と茜は右な!」
「了解ー」
「うん」
拓也の指示通り、友莉と明日香は左の木の陰へと消えていった。
拓也と茜も右側へ回り込む。
合成生物との距離が数メートルになったところで拓也は足を止めた。
「拓也……?」
「茜はもう少し先へ移動して、合成生物を倒して」
「わかった」
茜は頷き、さらに奥へ足音を立てないように走っていった。
拓也は合成生物の方を見る。
「お前のせいだぞ!」
「お前がぎゃんぎゃん言ってたからだろ!?」
二人はまだ喧嘩しているようだ。
合成生物は、拓也が見える限りで五体いる。
その中で喧嘩をしながら戦っているのだから、二人は相当な実力者だろう。
しかし、その喧嘩のせいでこうなっているのだから感心する気持ちも半減だ。
――茜が怒るだろうなぁ、と心の中で呟いてから拓也は地面を蹴った。
よくよく考えてみればこれが拓也の初めての戦闘だったのだが、拓也は冷静に動くことができていた。
おそらく、それは周りの五人のまとう空気のおかげだったのだろう。
誰一人、混乱せずに集中している。
それがどれだけ大変なことかを拓也たちは知らない。
拓也は馬とサルの合成生物に斬りかかった。
剣は重くて自由に動かせるほどではなかったが、それでも勢いのついた剣は合成生物の首を捉えていた。
しかし、斬り落とせるほどではなく合成生物は叫び声をあげた。
拓也は小さく舌打ちをして数歩大きく後ろに下がった。
合成生物は拓也の方へ突進してくる。
――何か、合成生物の弱点はないのだろうか。
ふとそんな考えが浮かぶ。
最強な合成生物を最初の方に出せば中学生が全滅してしまうことはわかりきっているはずだ。
だが、馬とサルを合成したらせいぜい肉食ではなく雑食なのか? くらいしか拓也は思いつかなかった。
そのまま拓也は身をかわした。
その時、ふとたまたま合成生物の体の一部が視界に入った。
「――まさかっ……」
突進してきて少し体勢を崩している合成生物に斬りかかった。
すると、今度は拓也に程よい手応えを残して合成生物の体の一部が胴体から離れた。
拓也が斬ったのは、合成生物の足だった。
足を一本無くした合成生物はバランスを崩して地面に倒れた。