戦闘開始 3
拓也たちは森の中へと進んだ。
六人は一言も喋らずに足だけを動かしていた。
いつ合成生物が来てもいいように武器は構えたままだ。
そのとき、一番後ろにいた凌と功祐が鋭く息を吸い込んである方向に蹴りを入れた。
「ギャン!!」
犬のような叫び声がして、すぐにドサッと何かが落ちる音がした。
「よし!」
「――いや、今のは俺だろ!?」
凌の言葉に功祐が食って掛かる。
二人の前方にはここに来て一番初めに見たあの合成生物が倒れていた。
「全然気づかなかった……」
「私もー……」
明日香と友莉は二人と合成生物を交互に見た。
拓也も全く気付かなかったし、茜もそうだっただろう。
「俺だ!!」
「いや、完全に俺の方が早かった!」
……当の本人たちは言い合いをしていたのだが。
だが、二人が言い合っていたのを聞きつけてか何かが六人のもとへ近づいてくる音を拓也の耳はとらえていた。
「ちょっと待て」
「俺だって!」
「絶対こっち! だって完璧に手ごたえあったし!」
「あのさ……」
「俺だってあったし!」
「お前がどうかしてるんだろ!」
「……」
拓也は深くため息を吐いて二人に話しかけるのを止めて、女子に話しかけた。
「……ちょっとよってくれる?」
「……え?」
「ここにいると完全に挟まれるし、ちょっと距離をあけよう。――急いで!」
拓也はやや強引に女子と一緒に二人をおいてその場を離れた。
「ど……どうしたの、急に――!?」
茜は言いかけた言葉を飲み込み、自分らが先ほどまでいたところを凝視した。
そこから、ガサガサといくつもの足音が聞こえる。
友莉と明日香もそこで気が付いたようだ。
四人は息をつめて二人のいる方向を見た。
一人の少年は深くため息を吐いて『1-B』の部屋から出た。
首を何度か鳴らして少し乾いた血のついたカマの刃を撫でた。
「ん。順調、順調」
そして少年は少し離れた『1-A』の部屋を見る。
入り口に人がたまりすぎたのだろう。
入り口の扉から出てくる血は離れたところで見ていた少年にもわかるほどとなっていた。
入り口に人が集まれば、それを狙って合成生物が現れる。
……冷静に考えればわかることのはずだった。
そのとき、『1-A』の扉が開いた。
少年はそれを見て、その部屋に背を向けて歩き出した。
『1-B』の扉には青い光で『Clear』と照らされていた。