手続き 3
詳しい時間がわからないが、数時間は経っただろう。
女子の列の最後の一人が扉の中に入っていった。
「女子のが少ないんだなー」
凌は呑気に赤い扉を見ながら呟いた。
一方男子の方の列も進んでいて、あと三十分もあれば拓也も中に入れそうだった。
*****
「おっ!」
扉の前に立っていた凌が声を上げた。
扉が開いたようだ。
「んじゃ、お先ー」
「おう」
凌が中に入ると、扉が閉まった。
拓也は制服のポケットから俊明のネックレスを取り出した。
まさか、制服の下に俊明がアクセサリー類をつけているとは思わなかった。
指輪にチェーンが通っているだけのネックレス。
少し、血痕がついている。
「……どこかで洗わないとな」
ポツリととても小さく呟いた。
そのままただじっとネックレスを見つめていると青い扉が開いた。
拓也は再びポケットにそれをしまい、中へ入った。
すぐ後ろで扉が閉まる音がした。
その時隣から声がした。
「そこの機械の指示に従い、手続きを行え」
「うおあああ!?」
拓也は驚いて声のした方を見つめる。
そこには黒スーツの男が立っていた。
拓也はまじまじと黒スーツの男を見つめた。
(本当に、ロボットか……?)
「早くしろ」
「……」
拓也は黒スーツの指差したテレビのような画面の前に立った。
『名前を入力してください』
拓也が前に立つと、画面の中から抑揚のない声がした。
そして、画面にはカタカナが五十音順にならんでいる。
拓也は『苗字』という文字の下の白いスペースをタッチした。
白いスペースの端が青い線でで囲まれる。
指を動かし『ヨコヤマ』と入力し、次は『名前』の欄を指で触れる。
同じように『タクヤ』と入力し、五十音順のカタカナの列の下にある『決定』ボタンを押した。
そのあとも年齢や、身長、体重など細かく入力した。
それが終わると終了かと思ったのだが、画面から再び声がした。
『次に、合成生物と戦うための武器を二つ決めてください』
「……は? 武器って、何?」
拓也は画面に聞き返した。
もちろん、返事は返ってこない。
画面を見つめると、二つの欄が出てきた。
『近距離』
『遠距離』
「……」
適当に『近距離』の方を触った。
すると、更に複数の欄が出てきた。
『剣、刀』
『打撃武器』
『その他』
拓也がどれから見ようか迷っていると後から黒スーツの男の声がした。
「早くしろ」
「はーい……」
拓也は少し肩をすくめて、『剣、刀』の欄を触った。
すると武器の名前がびっしりと書かれているのが画面に映る。
しかし、武器について何の知識も持っていない拓也は適当に勢いよく画面をスライドさせ、適当なものを選んだ。
『これでよろしいですか』
確認画面が現れ、『はい』を触る。
すると再び元の『近距離』『遠距離』の画面へ戻った。
『二つ目の武器を選んでください』
拓也は次に『遠距離』を選ぶ。
『銃』
『それ以外の射撃武器』
『投擲武器』
拓也は銃を選び、再び剣と同様な選び方をした。
確認画面で『はい』を触ると、画面が一番最初の名前の画面へと変わった。
『以上で手続きは終了です。出口近くの受け取り口から荷物を受け取り、先へ進んでください』
ゴトゴトッ、という音が奥でした。
奥の扉が開き、拓也はそちらへ足を進めた。
出口の近くに、壁を突き抜けているベルトコンベアーがあった。
そしてその下に緑色の布やら腕時計のようなものが落ちていた。
「受け取り口……?」
少し顔をしかめながらその布と時計のようなものを拾った。
拓也は布を持ち上げた後、意外と分厚いことに気が付きいてそれらを広げてみる。
「ふっ……服……?」
広げたせいで、緑色の服とズボンから白いタンクトップと長めのブーツが落ちた。
「早くしろ」
再び入り口から声がして、拓也は慌ててタンクトップも拾い上げた。
すると、そこから一本の剣と一丁の拳銃が姿を現した。
「うっそ、本物か……?」
拓也はそれらを拾い上げた。
拳銃は予想よりは重かったが、剣は更にずっしりと重かった。
「おっも……」
しかし、ぐずぐずしているとまた声が飛んできそうなので拓也はなんとか扉から出た。
扉が閉じる音がした。