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合成生物5

 拓也と友莉は左側へと走った。

 少し建物から離れたが、問題なく辿り着ける距離だ。

 そのとき……。

「ひぎゃあ!」

 よく分からない悲鳴を上げて拓也の後ろを走っていたはずの友莉が転んだ。

「ええええ!?」

 慌てて拓也は友莉のもとへ戻る。

「いたた……」

「お、おい、立てるか……?」

 友莉の腕をひいて起こしてから再び走ろうとした拓也はすぐ近くから合成生物が襲ってくるのが見えた。

「おわわわっ……」

「よいしょ!!」

 拓也が慌てている中、友莉がその合成生物に向かって足元に転がっていた大きめの石を投げた。

 見事それは合成生物の顔に命中して、鈍い音がした。

「ぎゃんっ……」

 合成生物は動きを止めた。

「早くいこうよー」

「あ、ああ……」

「もう、あんな石が転がってたら危ないよねー」

「……」

 二人は合成生物に近づかないようにして建物へ向かった。

 少し奥では茜と俊明が同じようにして走っているのが見える。

 他の生徒もやっと動き出したようだ。

 拓也と友莉の方は生徒があまりいなかったのもあり、合成生物とはそれ以上遭遇せずに建物へと着いた。

 扉は強化ガラスになっている様で、長い通路が見える。

 すぐ近くには赤いボタンがあり、拓也がそれを押すと扉が右へスライドした。

「すごいねー」

「……感心してないでいいから中入ってよ」

「あ、うん」

 友莉が建物の中へ足を踏み入れた。

 拓也は茜と俊明のことが少し気になり、後ろを振り返った。

 二人が走って行った方には残り四体の合成生物と、更に遅れて出てきた生徒たちで混雑していた。

 そのとき、拓也はハッと息をのんだ。

「拓也……?」

「――ごめん、ちょっとあっち行ってくる」

「えっ……。ちょっとまっ……」

 拓也は友莉が何か言うより先にボタンから手を離した。

 そして、扉が閉まる。

 友莉は扉を叩いている。

 恐らく中から外へは出られないのだろう。

 拓也は友莉に背を向けて二人のもとへ走った。


*****


 俊明と茜は最初は難なく建物へ向かっていた。

 二人が走ってから少しすると、『あと一分』と言う声がした。

 それとほぼ同時に後ろから残っていた生徒が建物に向かって走り出した。

「よそ見しないで!!」

 後ろを振り返っていた俊明を茜が怒鳴りつけた。

「ああ……おおお!?」

 頷いて、前に向き直ると茜に合成生物がとびかかるところだった。

「シッ……」

 そのとき、茜が鋭く息を吐きながら合成生物の顔面に肘鉄をした。

 ボキボキッという音がして、合成生物はその場に倒れた。

 ピクピクと痙攣をしている。

「……か弱いって言ってなかったか?」

「何か言った?」

「いいえ。っていうか、急がないと……!?」

 俊明は何かを言いかけたが、それをいい終える前に茜を押し倒した。

「いっ……!?」

 後ろに倒れこんだ茜が見たのは、突進してきた合成生物に激突した俊明だった。

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