合成生物4
合成生物の動きを黙って見つめていると、二人は後ろから声をかけられた。
「ねぇ」
「「!?」」
二人が驚いて後ろを振り返る。
後ろには見知らぬ女子生徒が二人、立っていた。
一人は髪を高い位置でポニーテールにした、左目の下に泣きぼくろがある少し背の高い少女。
もう一人はウェーブのかかった長い髪を下ろしたタレ目の少女だ。右目が長い前髪で隠れている。
ポニーテールの少女が一度、合成生物の方を見つめてから口を開いた。
「あそこに行くの、人数が少ないほど不利だと思うんだけど手伝ってくれない?」
「他にも人を集めるの?」
俊明の質問に少女が少し顔をしかめた。
「……行ってきたけれど、誰も話せるような状況ではなかったわ。皆パニック。ここに残っている人は大抵慎重すぎる人間以外は冷静に判断できずに乗り遅れた人間だけだから、しょうがないのだけれど」
少女の言葉に拓也は苦笑した。
「厳しいな……」
「ちなみに、そういう君らは?」
「私はここのドジな子を助けてただけよ」
「ううっ……ごめんね、茜」
目の隠れた女子が申し訳なさそうに俯いた。
茜と呼ばれた少女は「別に、向こうに行ければ問題ないし」と少女に微笑んだ。
「……あんたたちは慎重すぎる部類ね」
「そうですか」
俊明が苦笑しながら、拓也の方を見た。
「俺は別にいいんだけど、拓也は?」
「え? あ、いいんじゃないですかね」
「じゃ、決まりね」
『後二分』
茜が満足げに頷いたとき、再びどこからか声が聞こえた。
「あー、もうっ! うっさいったら!! 残り時間少ないし、作戦は単純。二手に分かれて合成生物を混乱させて、あの建物に走る!」
「オーケー」
「あ、ちょっと待って」
俊明と拓也が少し茜たちから離れようとすると、茜が不機嫌そうにため息を吐いた。
「……男女ペアにしようよ」
「ええ!?」
「なんでまた」
「か弱い女子を置いてくつもり?」
「……」
「わかった。じゃ、適当に」
俊明は目の前にいた茜の腕を掴んだ。
「こうでいい?」
茜は少し顔をしかめただけで、頷いた。
「ん。じゃあ、友莉とそっちの男子」
「……拓也」
「……ごめん。友莉と拓也は左から、合図したら出てくれる? くれぐれも気を付けて」
「はーい」
「わかった。……そっちもな」
拓也の言葉を聞いて、茜は少し面食らったがすぐににやりと笑った。
「当たり前。あたし、運動神経には結構自信あるから」
俊明と茜が少し二人と距離をとった。
そして、茜が声を出した。
「行って!!」
四人はほぼ同時に二手に分かれた。