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「なぜ助けてくれなかった!?」「使者は送ったじゃないか!」

 前回の最後の方で、救いの手というのは「これが神からの贈り物だ!!」なんていう分かりやすい形では差し伸べられてはくれないんだ、という話をしました。


 アメリカのミシシッピ川流域には、こんな逸話があります。

 逸話というか、マァ半ばジョークなんですけれどもね。


 ある町外れに、信心深いけれど頑固で偏屈な老人が一人で住んでいました。

 毎朝の礼拝を欠かさないこの老人は、「神の救いは必ず有るんだ」と固く信じています。


 大雨の降り続いたある時、ミシシッピ川の堤防が決壊して警報が出されました。

 町の住民が次々と避難して行きますが、この老人は頑として動こうとしません。


 近所に住む人たちの一団が通りかかって、一緒に避難しようと誘いますが、

「私は神を信じている。救いは必ずある。」

 と言って同行を断ります。


 次に州軍のジープが来て避難するように勧告しますが、

「避難などしたら、神の救いを信じていないことになる」

 と言ってやはり聞き入れません。


 やがて老人の家の周りにも水が漬いてきて、水位は平屋建ての家が沈む程になりました。

 老人は2階へ避難しますが、雨は一向に止まず水位は下がる気配を見せません。


 やがて、避難民を乗せたボートが老人の家に近づいてきます。

 乗せてやるから避難するようにと促しますが、

「神の救いを待っているんだ。余計なことをするな」

 と言って追い返してしまいます。


 さらに水位が増してきて、老人は2階の屋根に上らなければならなくなりました。

 そこへ国軍のヘリコプターがやってきて、縄梯子を下します。もう、これが最後のチャンスでしょう。

 ところが老人は、

「今こそ神の奇跡を証明する時だ!邪魔をするな!!」

 と追い払ってしまいました。


 結局老人は、更に嵩を増した水に飲みこまれて死んでしましました。

 彼が信じて望んでいたような奇跡は起こらなかったのです。

 やがて天に召された老人の前に神が現れます。

 老人は、声を荒げて神に詰め寄ります。


「なぜ奇跡を起こして助けてくれなかったんだ!!!」


 神は、呆れた顔で一言だけ返しました。

「ジープやボートやヘリを向かわせてやったじゃないか?」


 老人が信じて期待していた『奇跡』とは、いったいどんな物だったのでしょうか?

 天使が下りてきてどこか安全な所へ連れて行ってくれるとか、

 天から射す光に包まれて運び上げられるとか、

 自分の周りだけ水が漬かないとか、

 そういった『見た目で分かりやすい奇跡』を期待していたに違いありません。


 でもね?


 そういった分かりやすい奇跡って起こらないんですよ。

 なぜかと言えば、前回「神は言っている。支配など望んでいないと。」の最後でふれたとおりです。

 分かりやすいということは、騙り易いということでもあるんですよ?


 救いの手は常に差し伸べられています。

 それは、普段と大差ない隣の人との会話の中にあったりするかもしれないし、ただ聞き流しているだけのラジオ放送のおしゃべりに隠れているかもしれないし、たまたま入った食堂で点けっぱなしになっているテレビの番組の中で出演者が語っているかもしれません。


 あなたにそのつもりがないから、気が付いていないだけなんです。


 逆に、あなたが頼んでもいないし望んでもいないのに

「これがあなたにとっての救いです」

 なんて言いながら近づいてくるような人には厳重な警戒が必要です。

 言ってる本人は良いことをしているつもりでも、絶対にあなたのためにはなりません。


「求められていないアドバイスはしてはならない」

 というのが心理学、特に関せリング等に係る者にとっては絶対の原則なんですが、なんでそんな原則があるのかというと、本人が求めていないからには押し付けにしかならないからだし、何を押し付けたところで良い結果を生まないからです。


 にもかかわらず、実に多くの人が『求められてもいないのにアドバイスをしたがる』んですね。

 で、断られたりアドバイスが聞き入れられないと機嫌が悪くなるというね。

「なんだ、お前のためを思って言ってやっているのに!」

 とか言い出しちゃって始末に負えなくなるような人、身近にいませんか?


 なぜそんな風になってしまうのかと言えば、アドバイスをしていると良いことをしている気になれてしまうからでもあるし、他者に対して影響力を及ぼしていたいという“支配欲”のバリエーションみたいなものがあるからでもあるのでしょう。

 その辺については、そう遠くないうちに詳しく触れる機会があるかもしれません。


 書籍とか、こういったインターネット上で公開されているものについては少々事情が異なるんですが、なぜかと言えば

「手に取る人・見に来ている人は少なからず“求めている人”だ」

 という前提があるからですね。

 気に入らなければ捨てればよいし、余所へ行ってしまえばよいわけだから。


 関心を持ち続けてもらえるかどうかっていうのは、かなりの真剣勝負なんですよ。なにせ、あなたが目の前にいるわけではありませんからね。

 実を言えば、それならそれで結果を出すためのロジックも、戦略も戦術もあったりするんですが、私自身が実行できているという意味ではありませんよ?ええ、もちろん。

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