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旅路
君が思うより
強く
僕が思うより
強く
互いに求める心が
せめぎ合い
もつれ合って
何かの答えを
導き出そうと
足掻いている
今日も
身体の奥底に眠る
恨みも負い目も
何かを求めて
彷徨っている
その咆哮の先に
なにが見えるのか
どんな月が
姿を現わすのか
寡黙な恋人よ
秘密の親友よ
教えておくれ
いざなっておくれ
今はなにも
約束も
保証もなく
とうに失くしたものを
知って欲しくて
ただそれだけで
満足している
それが
愛と呼べるのかどうか
非日常に
慌てて逃げ込む
臆病な
野良猫のように
熱い血潮の
ほとばしりの中で
バラバラになった
過去を
かき集めている
今日も…
元の形を思い出すために
そして
元あった場所に
還るためにか
身体を寄せ合い
重ね合う
燃え立つ
夜明けのように
孤独という
波のうねりに
この身を任すんだ
今はただ
「何処かで会った?」
そんな
頼りなさだけを糧に
君が思うより
強く
僕が思うより
強く
互いに求める心が
せめぎ合い
もつれ合って
何かの答えを
導き出そうと
足掻いている
今日も




