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月に鳴く蝉

記憶の中の優しいお母さん

どうしていますか

僕は元気でやっています


あれからずいぶん経ちましたね

僕はとてもたくさん泣きましたよ

人間の体からあんなに沢山の涙が出るなんて

知りませんでしたよ


いまは遠いむかしのことのようです


結局さいごまで僕は

あなたを許せませんでしたね

でも本当はもうどうでもよかったことかも知れませんね


僕も親になりいろいろわかったことがありますよ


ひとは弱い生きものだから

寄り添って支え合うものなんですね

優しさは時に残酷だけれど

それでもひとは優しさを求めてしまう


そういうものなんでしょうね

きっと



ひとりわけもなく悲しくて

寂しくて やるせない夜

ふと 思い出す あなたの面影


気がつけば

まん丸お月さん 微笑んで


月に鳴く蝉 降りしきる

星のきれいな夜でした




なんども傷つき 傷つけて

ここまで生きてきました


裏切ったり裏切られたりしながら

ひとは強くなっていくものですね

頼んだ覚えもないのに

ちょっぴり腹も立ちますが


ひとにはいろんな顔があるものですね

最初に教えてくれたのはお母さん

あなただけれど


僕を捨てていったお母さん

ほかの男のひとを選んだお母さん

僕に優しかったあなたも 僕を捨てていったあなたも

どちらが本当のお母さんなのかって

ずっとわからなかったけど

どちらも本当のあなたなのですね



人生は後悔の連続だというけれど

あれはウソだと思います


ひとは頭ではわかっていても

どうしようもないことが沢山ありますよね


苦しんで 悩み尽くして

大切なものを見失うときもあるけれど

みんな選んだ道に誇りを持ってるって

そんな感じがしますよ


だからきっと

恥ずかしいことなど 何ひとつないのでしょうね



泣いたり笑ったり忙しい毎日も

今ではようやく落ち着いて

どうやら少しは穏やかに過ごせそうです


まわりには良いひと達ばかりとは限らないけれど

それでも悪党や悪人はテレビの中だけみたいです


心を打ち明けるほどの

素晴らしいひとにも出会い 僕はとても満足しています



お母さん


聞きたいことはまだまだあるのですが

今日はこのくらいでやめておきますね


気持ちがいっぱいになったら

泣いてしまいそうになるから



お母さん


持てそうもない荷物なら

はじめから言ってくれればよかったのに


ああ でもやっぱりだめですね

あの頃 僕はまだちっさな子どもだったから

あなたの哀しみを受けとめるのは 無理だったのでしょうね


もしもいま あなたが生きていたら

今なら あなたの荷物を少し持ってあげられたかも知れませんね



記憶の中の優しいお母さん


ひとは弱い生きものだから

寄り添って支え合うものなんですね

優しさは時に残酷だけれど

それでもひとは優しさを求めてしまう


きっと

そういうものなんでしょうね



ひとりわけもなく悲しくて

寂しくて やるせない夕暮れ

ふと 思い出す あなたの面影


気がつけば

あかね色の空 微笑んで


アゲハチョウ舞う 道の上

夏の日差しが 溶けていきました




ひとは弱い生きものだから

寄り添って支え合うものなんですね

優しさは時に残酷だけれど

それでもひとは優しさを求めてしまう


嗚呼

心を閉ざして

ここまで歩いてきたけれど


強がりは

寂しさのきっと裏返しなんだね



きっと

そういうものなんでしょうね




ひとりわけもなく悲しくて

寂しくて やるせない夜

ふと 思い出す あなたの面影


気がつけば

まん丸お月さん 微笑んで


月に鳴く蝉 降りしきる

星のきれいな夜でした


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