第三話 現場
まずは事件現場に行くことにした。
だがすぐにではない。俺には会社が……仕事がある。
会社での立場? そんなもの平社員に決まっている。特別大きな成果もあげないが大きなミスもしない、俺はそんなつまらない男だ。
とりあえずはいつもどおり朝起きて仕事へと出かけ定時まで時間を過ごす。
今日はいつものようなサービス残業もなく家に帰れそうだ……と思っていると……
「おい不二~。今日は花の金曜日なんだ飲みに行こうぜ~」
この馴れ馴れしいのは同期の山下。まったく……”花の金曜日”ってそれ死語じゃねぇのか……?
「今日は用事があってな。さっさと帰るよ」
「なんだよ。つれない奴……どうせ彼女もいないお前に何があるんだよ」
不二は山下を無視してタイムカードをきり事件現場へと急ぐ。
事件現場のビルは……ここか……なかなか大きな会社だな……この会社は確か取引先だよな……
俺の会社はシステム会社、いわゆるIT企業だ。
この取引先にはウチで作ったシステムを入れている……
「死んだの……誰だっけ……」
「三島さんだよ」
背後から声が聞こえる……振り向くとそこには見知った顔があった。
「志田さん! お疲れ様です」
「不二。早く帰ったと思ったらここで何してんだ?」
この人は俺の先輩の志田健吾さん。いつも面倒を見てくれる先輩だ。
「いや……ここで自殺があったのか~って思って……」
「……みたいだな」
先輩に自分が三島さんとぶつかって死んだんすよ~などとは言えず……挨拶だけしてその場を後にする……
志田は黙って不二の背中を見つめていた。