第二話 理由
「な、なんで……死んでないんだ……?」
警察官は首を傾げ実の顔を見つめた。
気持ちが悪い……吐き気がする……何故……何故……。怖くなり全力でその場所から走り去る。
「ちょ、ちょっと!おい!……まぁ近くで自殺が起きたんだ……逃げたくもなるか……」
いつもの帰り道を全力で駆け抜ける。小学校の前……いつも営業周りで時間を潰す公園の前……晩飯をいつも買って帰るコンビニ……
俺が住んでいるのは築10年のボロアパート……。ここで一人寂しく生活している。彼女はこの世に生を受けてから25年立つが一度もいた試しがない。
部屋の前まで行きカバンから鍵を出す。手が震えて中々、鍵穴に鍵を通すことが出来ない。
やっとのおもいで鍵を開け部屋に入り鍵を閉める。乱れた呼吸を整え冷静さを取り戻すが……脳裏に”あの時”の光景がよぎる……そう……あの”トマト”。
信じられないことだが……飛び降りてきた人間の顔が鮮明に思い出される。
確か”おっさん”だったよな……うん……そうだ。”おっさん”とぶつかってそして……頭が割れて……割れた後の”おっさん”の顔……悲しそうだった……
「そうだ……なんであんな悲しそうな……」
自殺に巻き込んでしまった悲しさの顔か……はたまた自殺の理由か……
知りたい……なぜあの”おっさん”が死んだのか……なぜ自殺しようと思ったのか……テレビのリモコンを取りニュースを見つめる……
『……自殺の理由は……』
ニュースから俺の知りたかった情報が流れる。自殺の理由……それは……リストラ。現場の遺書に詳しく書き残されていたようだ。
「本当に……自殺なのか……?……違う!」
まっすぐ前を見つめ目を閉じる……間違いなく……いたんだ……人が……”おっさん”が落ちてきた方向を見たとき人影があった……ビルの屋上から誰かが見つめてた。人々の目は2つの遺体に集中していたかもしれないが俺は状況を覚えている!
だが……「どうすればいい……どうすれば……」