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天国へ行った大罪人

作者: 小雨川蛙
掲載日:2025/12/30

 ある大罪人が殺された。

 罪無き人を数え切れないほどに惨殺した男だ。

 彼はあらゆる手段で苦しめられた後に火炙りにされた。


 それでも彼は笑っていた。


「これであの人の下へ行ける」


 そう笑って。



 ***



 そして、死者の国。

 天国と地獄のどちらかへ、死者は必ず行かねばならない。


 神様は大罪人へ問う。


「何故、あなたはこのようなことをした?」

「神様。グレースをご存知ですか?」


 もちろん、神様は知っていた。

 生前、ありとあらゆる悪行を成した悪女だ。

 彼女以上の悪などいないと思えるほどだった。

 ――尤も、現在では大罪人の罪の方が重いが。


「無論知っている。だが、それがどうした?」

「神様。私は生前、彼女の恋人でした」


 神様の顔が微かに変わった。

 大罪人は自らの望みが叶うと確信しながら言った。


「だからなのです。彼女は間違いなく地獄に居るでしょう。だから、私はあらゆる罪を犯しました。必ず彼女の下へ行くために」


 そう。

 大罪人は愛しき恋人の下へ行くために罪を犯したのだ。


 何と救い難いことか。

 神様の周りで天使たちが眉を顰める中、神様は涙を流した。


「何と素晴らしい愛だろうか」


 そう言って。

 感涙の涙を流し続けた。



 ***



 天使たちは語る。


「神様より愛に満ちた者はいない」

「あのような大罪人にさえ救いを与えた」

「その通りだ。私達ならば奴を必ず地獄へ落とした事だろう」


 そう天使たちが嗤う隣で大罪人は泣き続けた。

 きっと、感動の涙だろう。


 なにせ、あれほどの罪を犯したと言うのに神様は彼を天国へ置くことにしたのだから。

 愛していた恋人と決して出会えない場所。

 それが彼の永遠の居場所なのだ。


『あなたのような素晴らしい愛の持ち主こそが天国へ居るべきなのだ』


 慈愛に満ちた顔を大罪人は生涯忘れることはないだろう。




 生涯。

 つまり、死後である今は永遠に――。

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― 新着の感想 ―
 微かに顔を変えた神様の思考が気になるところではあるものの、大岡裁きの逆を打つ皮肉が効いた心憎い裁きが心地良くも、天に召されたであろう被害者を思うと何故の声が止まぬ大粒の涙が雨となり、罪を許した地上に…
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