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劣化コピーの偽勇者、禁術チートで異世界ジャーニー~役立たずと追放された俺、最強禁術で“真の勇者ごと”ぶち抜きます〜  作者: 厳座励主(ごんざれす)
第1章 旅立ち

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第4話 旅立ち、そして最初の一歩

「おはよ、ござます……むにゅ」


 まるで長い昼寝から目覚めたかのような調子。

 あっけに取られて言葉が出ない俺をよそに、彼女はふらふらと浮かびながら周囲を見回している。


「んぅ……わたし、セラフィです。あなたが、わたしのほごしゃさま、ですね」


 ほご?

 ……ああ、保護者、か。

 たどたどしく喋るから、単語を判別するのに少し時間がかかる。


「うん、そう……ってことで、いいのかな。俺は神谷悠斗。きみの封印を壊したというか、外したというか」


「はい。じつはわたし、なかからずっとみてました。ほんとうに、ありがとうございます。そと、ずっといってみたかったです」


 中からずっと。

 封印されていた間、意識があったということだろうか。

 禁書曰く、神話の時代から?

 それは一体何千、何万年前のことなのだろう。

 彼女はその間ずっと意識を持ちながら……。

 ありがとうと笑う彼女に、俺はいたたまれなくなり、視線を落とした。

 

「……お見事」


 隣で、禁書が満足そうにページを閉じた。


「術式も安定しているし、反動もそれほどのようだ」


 その言葉で自分の体に意識を向けると、体が重くなっているのを感じた。

 これが反動の倦怠感か。

 連発は厳しいが、命の危機などはなさそうだ。


「キミは文句なしに、禁術の継承者だよ」

 

 その言葉に、ほんの少しだけ、こんな俺でも胸を張っていい気がした。

 そして再びセラフィの方を見やる。


「約束する。これからは、俺がキミとずっと一緒にいるよ」


 俺がそう言うと、セラフィの顔がぱっと明るくなった。


「……っ! ほんとに? ほんとにずっと、いっしょにいてくれるんですかっ?」


 ぱたぱたと宙を飛びながら、まるで子犬みたいに俺のまわりをぐるぐる回る。

 その羽音がやけに軽くて、やわらかい。

 あまりの喜びように、俺は苦笑しながら言った。


「ああ、もちろん。嫌じゃなければ、だけど」


「やじゃないっ! ぜんぜんやじゃないです! わたし、うれしいですっ!」


 ふわっと飛び上がって、俺の胸に小さな体を抱きつけるセラフィ。

 その温もりは、どこか不思議に安心するものだった。

 そんな俺たちの邂逅を遮るように、コホンと咳ばらいが聞こえてくる。


「さて、盛り上がっているところ悪いが、そろそろ行ってもらおうか」


 禁書はパタンと一枚ページを閉じながら、俺たちを見やる。

 その声には「やれやれ」と言わんばかりの軽さがあった。


「行くって……」


「地上だよ。外の世界。禁術を身に着けたキミなら、よほどのことが無い限りは生き延びられるだろうしね」


 当然のように言われたが、言葉に詰まる。


「いや、行くのはいいけどさ……俺、何をすれば……」


 無理やり異世界に呼び出されて、偽勇者と呼ばれ、殺されかけ。

 ここで禁術を手に入れたとはいえ、じゃあ何をすべきかなんて正直わからない。

 そんな問いかけに、禁書はあっさりと回答する。


「ん? 気ままに旅でもすればいいじゃないか」


 それはまるで昼下がりにコーヒーでも勧めるかのような、軽い調子で。


「美味しいものを食べて、綺麗な景色を見て、たくさんの人と出会って、誰かを助け、感謝される」


 そこで一旦区切り、また続ける。

 

「そういうのが、人生の醍醐味だろう?」


 なんて無責任で、ふざけた答えだろうか。

 でも俺は、ふっと笑ってしまった。


「それ、悪くないね」


 胸の奥に灯がともるようだった。

 誰かに望まれて、誰かと共に歩いていける。

 そんな道があるなら、悪くない。


「セラフィ、たっくさんみたいです! おいしいのとか、きれいなのとか、ぜんぶいっしょに!」


 無邪気な笑顔で小さな手を掲げたセラフィに、思わず笑みがこぼれる。

 俺たちは、もう一人じゃない。


「じゃあ頼むよ、保護者くん」


 禁書が最後のページをゆっくりと閉じると、空気が微かに揺れた。

 俺の足元に浮かぶ魔法陣の光は、二人の旅立ちを祝福するかのように優しく脈打っている。


 光が舞い、風が生まれる。

 見えない何かが背中をそっと押してくれるようだった。


「さあ、行っておいで。この世界は広いよ」


 禁書(グリモア)のその言葉に、俺は小さく頷いた。


「うん。……気楽に行くよ」


「きらくに! です!」


 セラフィの小さな手を握る。

 俺たちは、もう選ばれなかった者じゃない。

 捨てられた存在じゃない。

 この世界で、何かを見つけに行く。


 光の輪が俺たちを包み込み、境界がほどける。

 時間が、空間が、未来が動き出す。


 無数の光が踊るその中。


 俺とセラフィは、新しい世界へと――


「――っ!?」


 視界が色づいた、その瞬間だった。

 大地を揺るがすような重低音と共に、目の前に。


 でっっっっっかい熊。


 いや、正確には熊型の魔物。

 ありえないサイズ。

 全長はトラック級。

 鎧のように硬そうな毛並み、鋭く光る鉤爪、金色の瞳がこちらを睨んでいる。


「きゃーーーーーーっ!」


 セラフィが悲鳴を上げて、俺の後ろに飛び込んできた。


「いきなりすぎるって!!」


 状況判断は後回しだ。

 まずは目の前の脅威を、消す。


「セラフィ、離れないで!」


「ひうぅっ」


 俺は彼女を背にかばいながら、構えた。


絶界放逐(バニッシュドーム)!」


 叫ぶと同時に、掲げた掌に紫紺の光が灯った。

 じわりと膨らむようにして、淡くゆらめく球体が出現する。


 空気が、鳴った。

 びりびりとした静電気のような振動が空間を走り、あたりの草葉がざわりと揺れる。

 球体の中心に、万華鏡のような幾何学模様が瞬き始めた。


 巨大な熊は、その異様な光に気づいて咆哮を上げる。


「グァアアアアッ!!」


 だが、遅い。

 泡のように見えた球体がぐにゃりと歪み、空間ごと歯車のように回転した。

 ドンッという地鳴り。

 魔物の上半身が一気に引きずり込まれる。


 抵抗する暇すらない。

 まるでこの世界から強制的に抹消されるかのように、巨体が吸い込まれた。


 ズン……ッ


 わずかに遅れて、周囲の空気が圧縮されたような反響音が広がる。

 何事もなかったかのように光は収束し、静寂が戻ってきた。


 ただ一つ。

 地面に残されたのは、ちぎられた前脚の一部だけ。

 それはボトッと鈍い音を立てて落ち、血を噴きながら草の上に転がった。


「……や、った……」


 かすれた声が、知らず漏れた。

 実感が湧かないまま膝が地面に着く。

 

 世界が、ぐらりと揺れる。

 視界の端が滲み、音が遠のく。

 まるで急に酸素が足りなくなったように、脳が空白に染まっていく。


 喉が渇いて、呼吸が浅くなる。

 両手をついた土の感触さえ、どこか他人事のように思えた。


 ああ、これが……。


 絶界放逐(バニッシュドーム)の反動。

 使えば数瞬、意識が飛ぶ。


「……っ、せ……ラ……ふぃ……」


 誰かの名前を呟いた気がする。


 滲んでいく視界の中、恐らく、俺は笑っていた。


 やっと()()()()()を踏み出せた、そんな気がしたから。

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― 新着の感想 ―
これぞ異世界ファンタジーっていう王道展開ですね。 何でも魔法をコピーできるけど劣化版。でも、誰にも扱えないような禁術をコピーしたらどうなるかワクワクします。
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