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劣化コピーの偽勇者、禁術チートで異世界ジャーニー~役立たずと追放された俺、最強禁術で“真の勇者ごと”ぶち抜きます〜  作者: 厳座励主(ごんざれす)
第4章 暁霊祭

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第39話 旅の醍醐味

 翌朝、まだ身体は重かった。

 まぶたを開けるのにも一拍遅れるほど。

 体中に鉛が詰まっているような感覚。

 禁術を立て続けに使った影響は、やっぱり伊達じゃない。


 それでも、ベッドの上でぐずぐずしているわけにはいかない。

 ここに長居はできない。

 それは昨夜の段階で決まっていたことだ。


「ふぁあ……ん、おはよございます」


 隣でセラフィが元気に伸びをしながら、のんびりとした声であいさつをする。

 その姿を見るだけで、昨日の騒ぎが夢だったんじゃないかと思えてしまう。

 ミリアも、淡く整えた髪を揺らしながら言った。


「宿の支払いも終わってますし、荷物も整えました。とりあえず街の門まで行きましょうか」


「ボクも準備OK……っていうか、早く出た方がいい気がするな、この街」


 そう言って肩をすくめたのは、金髪の美女――ベル。

 かつての甲冑戦士が、今や堂々たる旅の一員として振る舞っているのも、今日からの話だ。


「そうだな。とにかく……騒ぎを起こさずに抜けたい」


 それが俺の偽らざる本音だった。

 そう、騒ぎを起こさずに。

 しかし宿の扉を開けて、通りに一歩踏み出した瞬間。

 違和感に気づいた。

 街の人々の視線が、こちらに集中している。

 ちら、ちら……ひそひそ。


「ねえ、あれ……」


「昨日の、あの黒髪の……?」


「ほら、勇者を一撃でのして……炎の魔獣も全部……」


「え、本当に? でもそんな英雄様がこんな所に?」


 囁きはあっという間に広がり、通りの空気が変わっていくのがわかった。

 まずい、かなり噂になっているらしい。

 それでも、まだ足を速めればすれ違える――そう思っていた、そのとき。


「あ、あの!!」


 甲高い声がした。

 見ると、小さな男の子が道の向こうから駆けてくる。

 腕には手作りっぽいスケッチ帳。

 背中には折れかけた木の剣。


「あ、あなたが……真の勇者さまなんですよね!? ぼく、大ファンなんです! サインくださいっ!!」


 その言葉が、最後の引き金だった。


「勇者さまだ!!」


「真の救世主だってよ!!」


「昨日見たよ!! あれ絶対、普通の魔術じゃないよ! きっと勇者様しか使えないやつだ!」


「王都から来た勇者がボコられたって……もしやアイツ偽物だったのか?」


 瞬く間に、通りのあちこちから人が集まりはじめた。

 兵士に、市民に、果ては屋台の客まで。

 いつの間にか通りは人で埋まり、四方八方から質問と視線と称賛とサイン帳が殺到する。


「ちょ、ちょっと待って!? 違うんだ、俺は別にそんな!」


「勇者様ー! 笑って! 今、こっちこっち!」


 まずい……パレードみたいになってる!

 人の波に飲まれそうになりながら、俺は周囲に視線を送った。


 ミリアは優雅に微笑みながらファンサービス。

 セラフィは屋台の団子をもちゃもちゃ、あいつ買収されてるな。

 ベルは人混みに照れつつも、微妙に得意げな顔だ。

 おい……なんで楽しんでるんだ……。


「……逃げるしかないな。セラフィ! 肩に乗って!」


 決意した俺は肩にセラフィを乗せ、ミリアとベルの手を取る。

 そのまま人の隙間を縫うようにダッシュで離れ、視線を切って物陰へと飛び込んだ。


星鎖転移スターチェーン!」


 空間が裂け、転移の光が走る。

 次の瞬間、俺の体はふっと軽くなり――気がつけば、揺れる台車の上だった。


「うおおおっ!? 何だ何だ急にっ!?」


 視界に入ったのは、豪快に驚く中年商人――ハインさん。

 リリアスで世話になったキャラバンの主だった。


「ゆ、ユウトさん!? いったい何でこんな所に……」


「す、すいません、ちょっとワケありで」


「ワケありか……まあいいけどよ、アンタは命の恩人だ。また会えて嬉しいよ!」


 細かいことは気にしない性格、本当に助かる。

 俺は苦笑いしながら体勢を整えた。


「……ふう。なんとか、脱出成功ってとこか」


 セラフィはにっこり笑って、


「ゆーとさま! ゆうめいじんです!」


 ミリアはくすくすと微笑み、


「英雄は逃げ道も、ちゃんと用意しておくべきですね」


 ベルはというと、なぜか目を輝かせていた。


「いやー、注目されるって、悪くないかも!」


「勘弁してくれよ……」


 そう口では言ったけど、胸の奥がどこか暖かい。


 転移してきてすぐは()()()として見下され、陰で嘲笑されていた俺が。


 今朝、名前も知らない誰かから()()()()と呼ばれた。


 その子の目には、確かに憧れの光があって。


 あの時、守った命のひとつだったかもしれないと思うと不思議と、悪くなかった。


「……まあ、ちょっとだけ、いい気分かも……な」


 誰にともなく呟いたその言葉は、風に乗って荷台の隅に消えていった。

 まだ先のことは何も決まってない。

 次の目的も行き先も、未定のまま。

 でも、それでいいんだ。


 美味しいものを食べて、綺麗な景色を見て、人助けをして、感謝されて。


 それが旅の、醍醐味ってやつだから。

これにて完結となります。

この物語を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。


よければご意見、ご感想などいただけますと、次への励みになります。

よろしくお願いします。

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