表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劣化コピーの偽勇者、禁術チートで異世界ジャーニー~役立たずと追放された俺、最強禁術で“真の勇者ごと”ぶち抜きます〜  作者: 厳座励主(ごんざれす)
第4章 暁霊祭

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/39

第37話 終戦、そして

 焼け焦げた地面の中心に、俺は辛うじて立っていた。

 足元がふらつく。


「……っ、くそ……」


 覇躯顕現オーバードライブ絶魔界域ディスペルリング絶界放逐バニッシュドーム静寂福音セラフィックカーム――そして極めつけの灰燼葬カタストロフ

 いくら劣化コピーで反動が抑えられてるとはいえ、これほど短時間で連発すれば肉体は限界を迎える。


 特に灰燼葬カタストロフの反動は、40℃を超える高熱を引き起こす。

 本来の反動は自らも燃え尽きてしまうという自爆攻撃なので、それと比べればかなりマシではあるが、それでも辛い。

 熱が体の奥にこもっている。

 視界がゆらぐ。

 思考も、どこか遠くで響いているようだった。


「ユウト様!」


 セラフィの声が近づく。

 銀の羽音とともに、彼女とミリアがふわりと降り立つ。


「大丈夫ですか!」


 二人が駆け寄ってきて、俺の体を支えるように腕を伸ばす。

 体がもう言うことをきかない。


「二人とも……無事で、よかった……」


 気力を振り絞って、それだけは伝える。

 けど次の一歩を踏み出そうとした瞬間、がくんと膝が折れた。


「ユウト様!」


「しっかりしてください!」


 ミリアとセラフィが同時に俺を支える。

 ほんの少しだけ体温を感じた。

 安心する温もりだった。


「……あれ? 俺、一体何を……?」


「なんか、魔物が……炎は……?」


「勇者様……は、負けたんだよな」


 ざわざわと、観客席のあちこちから声が漏れ始める。

 魅了の余波から目覚めた人々が、徐々に混乱と現実に戻ってきている。

 まずい、かもしれない。

 真嶋と甲冑戦士の戦いを治めるために使った禁術の他にも、彼らはセラフィの姿やミリアの能力も見ている。

 極力騒ぎになるのは控えたい。


「……ここを離れるよう。すぐに」


 俺はミリアとセラフィに小声で告げた。


「ユウト様、動けますか?」


「なんとか、あそこまで」


 ミリアとセラフィに肩を貸してもらいながら、三人は闘技場の影へと身を寄せる。

 視線を避けながら、観客から死角になる場所へと回り込む。

 俺は息を整え、手を前に出した。


星鎖転移スターチェーン


 魔法陣が煌き、空間がねじれる。

 次の瞬間、三人の姿はかすかな閃光とともに、闘技場から消え去った。




------



「……ん」


 まぶたを持ち上げる重さの中で、ゆっくりと意識が浮上していく。

 次第に、天井が見えた。

 木造の梁。

 白い天幕。

 簡素な内装。

 ここは……滞在中の宿だ。


 記憶がゆっくりと戻ってくる。

 闘技場で真嶋と甲冑戦士の決戦を止めたこと。

 炎の魔獣をセラフィ、ミリアとともに討伐したこと。

 それから、星鎖転移スターチェーンで転移して――


「――気絶してたのか、俺」


 小さく呟いたその瞬間、気配を感じて顔を上げた。

 部屋の隅にいた三人が、ぱっとこちらに駆け寄ってくる。


「ゆーとさまっ!」


「ユウト様!」


 セラフィとミリア。

 見慣れた二人の姿に、まずは安心する。

 だが、次に目に入ったのは。


「……え?」


 金髪の美女だった。

 すらりとした長身、陽光を思わせる髪色に澄んだ碧眼。

 宿の備え付けの室内着に身を包んだ彼女は、こちらを見下ろしている。


 誰だ、この人?

 思わず目を瞬かせていると、その金髪美女が明らかにむすっと頬を膨らませた。


「……やっぱり、わからないのか」


 なぜか拗ねたような口調。

 次の瞬間、彼女は背後から何かをごそごそと取り出した。

 それはべっこべこに砕けた、黒鉄の仮面。


「え、キミ、まさか……!」


 その鉄仮面を顔にあてて、彼女は勝ち誇ったように言った。


「これでわかるだろう、ボクのこと」


「あーーーーっ!!?」


 半ば叫ぶような声が出た。

 あの無口で不気味だった甲冑戦士!

 さっきの闘技場で俺と真嶋に斬りかかってきた、あの重装歩兵だ。

 そういえば中身、美女だったな……。


「ちょ、なんでここに……」


 頭が混乱する中、彼女はさらりと答えた。


「魔獣騒ぎの途中で目が覚めたんだ。で、見てたら君がどこかへ行こうとしていたから……飛び込んでみた」


「そんなむちゃくちゃな……!」


 どさくさに紛れてついてきた、の一言では済まされないレベルのノリと行動力。

 それにしても、改めて見ても今の彼女は完全に美女だ。


 金髪ショートに切れ長の瞳、適度に引き締まった肢体。

 凛とした空気と不機嫌そうな表情が、逆に映えてる。


 でも中身は、無言で斬りかかってきた鉄仮面の戦士なんだよな。

 あの時は観客を守ることや、彼女の呪いを解くことに必死で特に気にしてなかったけど……。

 なんだこの違和感。

 どう処理すればいいんだ俺。

 脳の片隅でエラー音が鳴ってる気がした。

 混乱する俺の視線の端に、小さな姿が映る。


「……あれ?」


 銀色の髪に幼い顔。


「セラフィ?」


 ベッド脇にちょこんと座っていたのは、間違いなくあのセラフィだった。

 さっきの()()()()使()のような姿ではない。

 見慣れた、いつもの幼女バージョンだ。


「戻ってる……ね?」


 思わず口に出すと、セラフィは小首を傾げた。


「もどってる? なにがですか?」


 まったく悪気のない無垢な顔。

 その反応で、完全に本人が自覚していないことがわかる。


「こちらの宿の部屋に転移し終えた直後、セラフィさんの体が光に包まれて、そのまますうっとこの姿に」


「そうだったのか……少し話を聞きたかったけど、仕方ないね」


「またお会いしましょうって、最後に微笑んで」


 ミリアが語るその様子には、少しだけ名残惜しさと、憧れのようなものが混じっていた。


「……また、ね」


 俺は一言だけそう言って、静かに頷いた。

 不思議なことが多すぎて、いちいち驚いていたらキリがない。

 けどセラフィはセラフィだ。

 それだけは間違いない。

 

 普段通りの無邪気な笑顔を見て、散らかってた情緒も落ち着いてきた。

 そんな俺の様子を見て、隣にいた金髪の美女がすっと一歩前に出てきた。


「さて、そろそろボクの話を聞いてくれるかい?」


 真剣な表情でそう言った彼女に、俺はゆっくりと頷いた。


「……ああ。色々聞きたいことはあるけど……まずは自己紹介から、かな?」


 すると、彼女は軽く胸に手を当て、姿勢を正す。


「実はボクは――ルヴァライン王国の姫だったんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ