表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劣化コピーの偽勇者、禁術チートで異世界ジャーニー~役立たずと追放された俺、最強禁術で“真の勇者ごと”ぶち抜きます〜  作者: 厳座励主(ごんざれす)
第4章 暁霊祭

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/39

第30話 勇者VS異形

 バトルロイヤルが終わると、観客席の熱気はそのままトーナメントへと流れ込んだ。

 出場者は八名。

 地方予選を勝ち抜いた四名に冒険者ギルド推薦の凄腕たち三名と、さっきの甲冑の戦士。

 試合は一対一のトーナメント形式で進行し、どの試合もそこそこ盛り上がった。

 けれど。


「……まあ、やっぱりそうなるよなあ」


 俺は甲冑戦士の快進撃を見て、ため息まじりに呟いた。

 無言で、淡々と、ただ敵を倒すことだけに徹する戦い方。

 とにかく異様だった。


 剣戟、打撃、魔術。

 いずれも対処は完璧で、攻撃も鋭い。

 けれどそこに技や美学といったものは見受けられず、無機質に相手の全てを破壊していくだけの戦闘。


 そして、決勝戦。

 白銀の双剣使いを相手に、あの黒鉄の剣が振り下ろされた瞬間、試合は終わった。

 これまでと同じく、一撃。


『優勝者――無名の甲冑戦士! 本戦決勝カード、勇者マシマ・ゲン vs 甲冑戦士に決定です!!』


 場内が大歓声に包まれる。


「ど、どっちが勝つと思う? やっぱ勇者様……だよ、な」


「いっやあ、あの甲冑野郎、めちゃくちゃな強さだぜ。もしかすると……!」


「これは歴史に残る一戦になるぞ!」


 観客たちの興奮が渦を巻く中、俺はふと隣に視線を送った。


 ……いない。

 セラフィが、いない。


「……あれ?」


 思わず二度見した。

 右を見ても、左を見ても、銀髪のちびっ子がどこにもない。

 席の下? 違う。

 後ろ? 違う。


「…………おーい」


 呼びかけてみても返事はない。

 隣のミリアも気づいて、首を傾げた。


「いません、ね」


「いやいやいや、さっきまでここにいたよね!? 俺の隣で試合見てたよね!?」


 いや、まてよ。

 試合見ながら「すいーつすいーつ」って言ってた気が……。

 そうだ、そうだよ。

 会場入る時に、後で限定スイーツを買ってあげるって言ってたもんな。


「まさか……スイーツにつられて、単独突撃……?」


 あり得る。

 むしろ、十分にあり得る。

 ていうかそれしか考えられない。


「や、やばい……早く探しに行かないと」


 このままだと、迷子センター案件になってしまう。

 いやもはや既にそうなんだけど。

 立ち上がりかけたとき、ミリアが俺の腕をそっと取った。


「ユウト様。……気になるのでしょう? あの“勇者”という方、そして……甲冑の方」


 その言葉に、俺は言葉を詰まらせた。

 確かに、正直な所、気にはなっている。

 異様な強さの甲冑戦士が、圧倒的な勇者相手にどう立ち向かうのか。

 そして……真嶋が、どう処理をするのか。


「私に、探させてください。セラフィさんのことは、私が必ず見つけます。……あの子は、私の大切な妹ですから」


「……ミリア」


 その瞳には、強い意志が宿っていた。

 セラフィのことも、俺のことも、ちゃんと見てくれている。

 そんな目だった。


「わかった。任せた」


 俺は静かに頷いた。


「でも、無理はしないで。見つけたら、すぐ俺のところに」


「ええ。もちろんです。私だって、ユウト様のおそばにいたいんですよっ」


 ミリアは笑ってそれだけ言うと、群衆の中へと身を翻し、軽やかに駆け出していった。

 最近のミリア、ちょくちょくドキッとすること言うなあ。

 まあでも、今回は本当にありがとう、ミリア。

 そう思いながら、俺は再び目の前の闘技場へと目を戻した。


 勇者と、甲冑の戦士。

 この一戦が、何かを決定的に変える気がしてならなかった。


 そして決勝戦の開始を告げる鐘が、澄んだ音を響かせた。

 観客席の熱気はすでに沸点を超えている。

 対峙するのは、赤黒の戦装束に身を包んだ勇者マシマ・ゲンと、重厚な黒鉄の甲冑に包まれた“無名の戦士”。


 見た目の時点で、すでに“英雄 vs 異形”の構図は完成していた。


『さあさあさあさあ! 運命の決戦、開幕です!!』


 司会の叫びが響くと同時に、真嶋が動いた。


「ハアァッ!」


 足元の地面を砕き、風を裂く勢いで突進する真嶋。

 甲冑戦士は無言のまま、それを真正面から受け止める。

 金属同士がぶつかり合う轟音。

 砂煙が舞い、魔力の衝突が空気をビリビリと震わせた。


「うおおおおおっ!!」


 真嶋が振るう大剣から、衝撃波のような魔力がほとばしる。

 それを甲冑戦士が淡々と受け流す。

 剣戟、体術、魔術。

 ありとあらゆる手が交差し、闘技場はまさに戦場と化していた。

 観客たちは大歓声を上げ、興奮の坩堝と化していく。


 けれど次第に、俺は嫌な予感を覚えていた。


「……まずいな、これ」


 最初は競り合っていた両者の動きが、徐々に狂い始めていた。

 真嶋の剣撃がどんどん重く、荒くなる。

 魔術の精度より威力優先。

 まるで倒すというより壊すための戦い方に変わってきていた。


「くらいやがれぇっ!! 豪焔嵐フレアバーストッ!!」


 真嶋の怒鳴り声が響いた瞬間、空気が焼けた。

 赤黒い魔力が渦を巻くようにうねり、闘技場の中央に巨大な火柱が発生する。

 炎が風を巻き上げ、音を奪い、視界を染めた。


「……っ!」


 思わず目を細める。

 駄目だ、あれは完全にオーバーだ。

 殺す気か?

 いやそれ以前に、街のど真ん中で撃つ代物じゃない。


 甲冑戦士は瞬時に跳躍し、その一撃を回避した。


「やっぱそうなるよな……!」


 ズアアアアッ!!


 放たれた炎の奔流は標的を失ったまま、一直線に観客席へと向かっていた。


 黒煙とともに押し寄せる熱波。

 まるで意志を持った龍のように、炎がとぐろを巻いて迫ってくる。


「きゃああああっ!!」


「炎が……! 逃げろっ!!」


「うそだろ!? こっちに来る!」


 観客席から一斉に悲鳴と怒号が上がった。

 どよめきが割れ、押し合うように人が動き出す。

 恐慌の波が席から席へ、次々に伝播していく。


 もう間に合わない。

 あの魔術の規模じゃ、ひとたまりもない。

 逃げても無駄だ。


「くそ……!」


 俺は即座に立ち上がり、左足に力を込める。


覇躯顕現オーバードライブ!!」


 爆音のような鼓動と共に、全身に力がみなぎる。

 一瞬で視界が研ぎ澄まされ、足元の石畳を蹴った。

 瞬間、俺の体は観客席の前列へと躍り出る。


絶魔界域ディスペルリング!!」


 掌を前に突き出し、魔力を叩きつけた。

 光の波紋が広がり、突進してきた灼熱の炎を受け止める。


 バシュゥンッ!!


 霧のように、跡形もなく消し去った。


「な、なんだ!?」

 

「い、今の……!?」


「誰だあれっ!?」


 突然現れて炎をかき消した謎の男に、観客たちがどよめく。

 俺は一度、深く息を吐いた。


 危なかった。

 あと一歩遅れてたら、焼死体の山だったぞ。

 本気を出すのは勝手だが、観客を巻き込むなよ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ