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3話 怪しい二人組


 雨が降っている。それも大雨。


 ゴロゴロと雷が鳴っている。


 世界は、祈りを聞き入れてくれた。これなら使って良いと許可をくれた。


 でも、雷雨だけでどうすれば良いのか。それを教えて欲しい。


 教えてくださいって祈れば、教えてくれるのかな。でも、それをやっている間に、不審に思われて、この部屋に誰かが来ないとも限らない。


 ここは、勘でなんとかしよう。


「妖精」


 妖精という種族は、現象を引き起こすとか言われている。それが本当かどうか知らないけど、少なくとも、みんなそれを信じている。


 誰も見た事がない、伝説上の種族だけど、わたしの変化魔法だったら、なれる。


 妖精に変化して、ささっと逃げちゃおう。


 妖精なら、簡単に捕まえる事なんてできないだろうから。


 なんでかっていうと、妖精は、捕まえると災いを引き起こすって言われているから。それが嘘か本当か分からないなら、捕まえない方が良いって考えると思う。


 変化魔法かもしれないって疑われる心配もないよ。


 変化魔法で、普通は妖精になんてなれないから。なれないものになっているなんて、疑われないと思う。


「妖精……雨という現象を引き起こしに来た……これでいこう」


 見つかった時に妖精になり切るためにも、設定は欠かせない。


 今回は、この雷雨という現象を引き起こした妖精。捕まえれば、この組織を破滅に追いやるっていう設定でいくよ。


 まずは、変化しないと。


 小さくて可愛らしい妖精に変化。


 でも、本当にそんな種族がいたのかな。


 世界を滅ぼせる。誰も姿を知らない種族なんて。


 分からないけど、利用させてもらいます。


「これでよし。あとは」


 小さな妖精なら、通れる場所もあると思う。


 それに、今雷雨のおかげで、何か通れる場所があるのかもしれない。


 わたしを助けるために、雷雨だから。それにはきっと何か意味があるんだと思う。


「浸水する前に上に行くぞ! 誰か、鍵の姫を連れてこい! 」


 廊下から声が聞こえる。連れてかれる前にどうにか逃げないと。


 妖精に変化しているから大丈夫なはず。それに、ベッドに色々とものを入れて膨らませておいたから。少しくらいは、時間稼ぎになると思う。


 この間に急いで、逃げる。よりも、扉が開いた時に逃げる方が良いと思う。声がかなり近かったから。


 もたもた探していると、見つかる可能性あるから。


「鍵の姫、早く上へ」


 扉が開いた。今だ!


 妖精の姿で、ささっと、扉を出る。


 そもそも、わたしの姿を目視できていないみたいで、連れに来た人は気づいてない。


 これは、思った以上に簡単に逃げられるかもしれない。


 わたしは、急いで外に出る道を探した。


      **********


 外に出れたけど、帰り道が分からない。どうすれば帰る事ができるんだろう。このまま帰れないって可能性もあるかもしれない。


「……ん。例のブツはこれで良い? 」


「ああ。流石だ。かなり質が良い。これからもよろしく頼む」


「うん。こっちも、よろしく」


 こ、これは、またもや悪い事の予感。裏取引なの。これは裏取引に違いないの。


 わたしが止めないと。もしかしたら、世界征服とか言っている、あの人達の仲間かもしれないから。


 まずはただの妖精と思わせて、情報収集から始める。もっと詳しく話を聞かないと。


「そういえば、最近はどう? この国は安全だけど、他の国はかなり危険な状況なんじゃない? 」


「そうだな。他の国は、この国のように安全じゃない。いずれ、この国への移民が増えるだろうな」


 やっぱり、世界征服の計画の影響で、他の国は、かなり危険になっているのかな。早く止めないと、この国もそうなるかもしれない。


 それにしても、移民の受け入れはどうするんだろう。あまり増えると、土地とかがなくなっちゃうから考えないといけないと思うけど。


 わたしは、政とか詳しくないから、そんな事知らないんだけど。でも、色々と難しいって事はなんとなく分かる。


「俺の方も安全には安全だが、いつまで持つか。いずれは、他の国と同じように……」


「そんな事させないためにも、早く対策をしないと。大丈夫。僕は君の国を必ず守る。もし、何かあっても、必ず支援する。一緒に戦う。だから、一人で不安にならないで」


「ありがとう」


 裏取引なんだよね?


 なんか、違う気がしてきた。


「ん? 妖精? 迷子かな? 雨降ってるから風邪引くかも」


 えっ?


 ゆ、誘拐なの!


 世界征服とか計画している悪い組織からやっとの思いで逃げ切れた先で、裏取引らしき事をしている悪いかもしれない人に誘拐された。


 でも、ここで変化を解くわけにはいかない。鍵の姫とかいう話があるから、変化を解けば、誘拐だけじゃ済まないかもしれない。


 とりあえず、ここは様子見で。


      **********


 森の奥。古い一軒家。こんな場所に住んでいるのかな。


「ごめん。この隠れ家でしか面倒見れないから。僕の家、ペットとかあまり飼えないんだ」


 暗い緑色の髪に、琥珀色の瞳。しかも、顔が整っていて、美少年?


 って、誘拐犯に見惚れるなんてだめだよ。


 あれ?


 今の姿は妖精なんだから、誘拐は、ペットにして飼うつもりとか……それはだめ。ペットなんかになりたくない。


「雨に濡れて、風邪引くかもだから、このタオルで拭きたいけど……」


 と、とりあえず、人の姿に戻る。


「わぁ、人だったんだ」


 そんなに驚いてない気がする。


 同じくらいの目線で見ると、なんというか、不思議な雰囲気がある。


「裏取引の現場、見ていたんだから! 言い逃れはできないよ! でも、話くらいは聞かないとだから、聞いてあげる」


 話を聞くのは、どれだけ悪い事をしているのか知るためにも当然なの。


 この話を聞いてから、どうするか決める。


「えっと、裏取引ってなんの事? もしかして、さっきのアレを裏取引だと勘違いしちゃってる? あれは、友人とこっそり会っていただけで、怪しい事は何もないよ」


「なんで友人とこっそり会わないといけないの! 友人だと言うなら、堂々と会えば良いじゃない! 」


「バレると悪い人達が目的を勘繰ってきそうだから。それに、王族が表立って、他国の王族とこんな話してれば、噂になって大混乱になるかもしれない。気軽に話すなら、こうしてこっそり話す以外ないよ」


 えっ⁉︎


 お、王族?


「今、世界征服を計画して、大国から小国まで次々と手中に収めている組織がいるんだ。その組織から自分達の国を守ろうと情報交換をしていただけ」


「で、でも、ぶつって。ぶつって言ってたのは」


「あれは、この国の特産品を使ったパン。彼、この国のパンが好きだって言っていたけど、こんな状況で、中々買う機会がなかったみたいだから、あげただけ」


「その話本当なの? 王族がそんなに気楽に外に出れるとは思えないよ」


「僕も彼も、王位継承権がなくて、やる事さえやれば自由にして良いって言われてるんだ。政略結婚とかもさせる気ないらしいから。なんだっけ? 確か、僕と彼は、その国の王族としていてくれるだけで国が守られるとかなんとか言っていたと思ったけど」


 いるだけで国が守られるって、どういう事?


 そんなの、世界に守られているようにしか思えない。もしかして、この人達はわたしと同じで、世界に守られているのかな。


「って、もうこんな時間? 夕食の準備しないと。君も、今日は遅いから泊まって良いよ? 暗いのに女の子を一人で帰らせるわけにはいかないから」


「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて」


「うん。そういえば、名乗ってなかった。僕はヴィレージェ。君も疲れているみたいだから、色々話すのは明日にしない? 君に危害を加える事も、逃げる事もしないって約束するから」


 まだ、知りたい事はあるから、そうした方が良いかな。


「うん。そうさせてもらうよ」

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