16話 消滅の風
これで出てきてくれるかなって不安だったけど、出てきた。
「何用だ。世界の姫君とその従者達」
「お話聞きたい。ここの異変の事、何か知ってる事ない? 詳しく聞きたい」
「ほう。姫の願いだ。我が問いに答えられれば、それに答えよう」
問い。あまりにも難しすぎると答えられないかもしれないけど、世界のおかげである程度の知識は持っているから、大丈夫って思って良いのかな。
「夜の世界で迷子の子。導きの印を携し少年。未来に生きる少女。過去の異物。いつかの未来に起こりうる事。なぜそのような事を知れる? 」
これって未来視で良いのかな。なんか簡単すぎるから、裏があるんじゃないかって疑いたくなる。
でも、それ以外に思いつかない。
「未来視なの」
「違う。そんな単純な事は問わん」
「……ぷしゅ」
エミシェルスがいじけた。
未来視じゃないとすれば他に何があるんだろう。未来視以外で未来を知れる方法。
世界なら未来を知っているかもしれないけど、世界と話す事ができる人なんて、姫とエミシェルスくらいだと思うから、それはないと思う。
そもそも、あの本の著者って全部不明だった気がする。それもヒントになっているのかな。
「……実際に未来から来たの! 」
「……姫と同じような事ばかり言う。あの姫を濃く受け継いでいるという事か」
姫と同じ事なら、著者が姫でない事は確かなのかな。
もし著者が姫だったら世界が知っているからかもしれなかったけど、これで完全にこの選択は消えた。
「……そもそも知らない? 」
「なぜだ? 」
「なんとなく」
「解答になっとらん」
知らないにはずれとは言ってない。もしかしたら、はずれはあっているかも。でも、理由を言わないと解答した事にはならない。
どうしてこれだけでそもそも知らないってなるんだろう。
「ん? 確かいつかの未来に起こりうる事って」
「貴様は解答するな。姫の想い人」
「あー、やっぱそういう事か。昔読んだ事あったんだよな。答えになる本」
読んだ事あるってもしかして
「未来に起こりうる事はそもそも本の題名。だから、未来を知っていない」
「……ぷしゅ」
「エミシェルスが、未来の英雄を感じ取ったんじゃないかって」
そんな事言ってないと思うんだけど。あの三文字にそんな事が詰まってたのかな。
「正解だ」
「当然なの。シェミーリムはとっても賢いんだから。それで、話してくるれる? ここの異変」
「……時期に分かる。見た方が理解できる異変だ。なんなら、もう一問行っとこうか? 」
もしかして、問いに答えるっていうのは、試しているというより、異変が起こる時間がまだあるからだったのかな。暇つぶしみたいな。
時期に起こるっていう事は常に起きているわけじゃないみたいだから、この異様な雰囲気は元々なのかな。
「時期? いつも起きてるわけじゃないの? 」
「そうだ。一定期に起きる。姫がいた時はなかったのだが……愛が消失したのが原因か……」
愛が消失? 愛は存在すると思うんだけど。エミシェルスだって、シェージェミアの事を愛している。それに、クゥロレボだって、彼女さんを愛している。愛が消失しているなんて思えない。
でも、愛にもいろんな種類があるって聞くから、別の愛が消失しているのかもしれない。
魔物は、どこか悲しそうにしている。わたしが知っている魔物は、破壊だけで、こんな感情を見せる事なんてないんだけど、本当に違うんだね。
「……」
「代理に解決できるとは思えぬが、せいぜい、頑張れ」
「……私は」
突然、闇色の風が吹き荒れる。これは強風じゃなくて暴風だよ。
「きゃ」
「シェミーリム! 」
危なかった。ヴェレージェに手を握ってもらわなかったら、どっかに飛んで行ってた。
エミシェルスは大丈夫かな。
「シェージェミアしか守れないの。ヴェレージェ、シェミーリムとこっち来て。それか、祈らせて」
祈り。祈りでどうにかなるんだ。世界に守ってもらうように祈れば良いんだ。
でも、エミシェルスは、どうやって? 祈っているようには見えないんだけど。
今は、そんな事考えてないで、とにかく祈らないと。
**********
やっと収まった。三十分以上祈っていた。
やっと風が収まった。
「ふぅ。疲れた」
「癒し、癒し」
エミシェルスが癒しすぎる。体力回復と魔力回復までできるなんて。
「……消失の風。これが異変」
「前にエミシェルスが話していたあれか? 」
「うん。世界を滅ぼせる風。早くなんとかしないと、世界が滅びる可能性もある。風が止む方法は……あるにはあるけど、できるか分かんない」
そんなに難しいのかな。でも、やらないと、世界のためにも。
「その方法教えてくれる? 」
「……うん。分かる範囲でだけど。それでも良い? 私も、全部知ってるわけじゃないから」
「良いよ。ありがとう」
**********
消失の風の正体を突き止めないと何もできない。エミシェルスがそう言っていたから、わたし達は、消失の風の正体を探す事になった。
「消失の風は、生物だって言われているの。でも、それを確認した人はいない。そう言われているけど、王達は確認……ううん、認識していた。止めていた。だから、不可能ではないと思う」
「姫達は特殊な力で認識していたんじゃないのか? 」
「うん。だから、私達には難しい。でも、やらないと、世界は滅ぶ。私が見た文献や記憶から情報は渡せるけど、私は、見つける事ができないと思う。見つけられるとしたら、シェミーリムだけ。見つけさえすれば、私達も認識できる」
わたししか見つけられないって、責任重大すぎる。
でも、やれないなんてできないよね。
「ヴェレージェ、昔、姫に関する文献を見せた時に消失の風についても少し載っていたと思う。覚えてる? 」
「覚えてる。消失の風は、実態のない生物と言われているけど、実際は、実態があるけど見る事ができないだけ。消失の風の生物は、風の中に紛れていて、誰も近づけないから。近づけば、消失の風の影響を受ける」
「うん。消失の風の影響で、姫が世界にもたらした影響が全て消える。そうなれば、人々は争いに明け暮れ、大切な人なんて作らない。みんな一人になる」
少しだけだけど、本で読んだ事がある。昔は、世界は争いに溢れていたって。
「見つけ方までは書いてなかったけど」
「そこは知ってる。記憶にあったから。むずかしいから、誰か翻訳機能でもつけて欲しいけど」
「俺が翻訳する」
「うん。夜の隣に潜む影、子供の風の子産み落とされる。長き眠り、星月の目覚めに呼び覚まされる」
昔の言葉ではないけど全然分かんない。シェージェミアは翻訳を任されていたけど分かったのかな。
「夜の隣に潜む影……光の届かない場所。子供の風の子は、消滅の風……光の届かない場所で消滅の風が生まれる。長き眠り、星月の目覚めに呼び覚まされるは……消滅の風は長い眠りを星月の目覚めにより目覚める……星月? 姫と王の一人だったと思ったが」
この辺で光が届かない場所……そんな場所多すぎて分からないよ。
それに、姫はどこにもいないのに、どうして目覚めているんだろう。
「……全て消えるのが消滅の風だけど、何が関係あるんだろう……続き話すね。星月の祈りと世界の子の涙の願いにより、風の鎧消失する。このあとは普通にがんばるしかないらしいの」
「星月の祈り……姫ともう一人が誰なのかだな。その二人と世界の子は、シェミーリムだろうな。涙の願いは、前にエミシェルスから聞いた、強い願いだったよな」
「うん。そうだと思う。夜の隣ってどこなんだろう」
やっぱりそこだよね。夜の隣。その場所が分からない限り、風の居場所は分からないから。
「……ここで光が一切届かないところなら心当たりがある」
「どこ? 」
「洞窟。この近くにあるんだ」
「そこへ行ってみる? 」
「さんせいー」




