15話 毒石探し
ヴェレージェ達とは離れて、川の中を探す。
毒石ってどんな石なのか知らないけど、見つけられるのかな。
「……はぁ。シェージェミア、優しすぎるよ。姫の手がかりだからってこんなに優しくしてくれるなんて」
うん、そうじゃないと思うんだけど。好きだからこそ、色々と買ってあげたくなるだけだと思うんだけど、エミシェルスは全然気付いてないみたい。
これって、教えてあげて良い事なのかな。それとも、自分で気づくまで待つのかな。
「……毒石も見つかんない。シェージェミアに無駄足をさせちゃっているのかも」
「それはないよ。ないならないで、原因がそうじゃないって分かるから、無駄足じゃないよ」
「でも、こんなに寒い水の中にみんなを入れて……見つからないなんて……」
大雨の中、気温もかなり低い。これでなかったら申し訳ないっていうのは分かる気がするよ。でも、入るって決めているのは、自分達だから、気にしないで欲しいんだけど、それは難しいのかな。
毒石があれば、エミシェルスの落ち込みもなくなるんだろうけど。
「シェミーリム、可愛い石見つけた」
ハート型の石。なんだか、恋の願いが叶いそう。
「恋が叶いそうな石だね」
「……シェミーリムが、ヴェレージェに好きになってもらえますように」
「自分の願いを叶えなよ。シェージェミアとの」
「私は、叶って欲しいって思ってないから。だから、シェミーリムのお願い。私は、シェージェミアに覚えておいてもらえれば良いの。シェージェミアは、私以外の大切な人を作ってくれれば良いの。そうじゃないとだめ、だから」
自分は、誰かに愛されてはいけないみたいな感じ。どうしてなんだろう。エミシェルスが、好きな人と結ばれて幸せになるために、わたしができる事はないのかな。
「……エミシェルスが、シェージェミアと結ばれて幸せになれますように」
この石にそれを願っただけで何かが変わるとは思わない。でも、何も変わらなくても、何かが変わってくれればと間期待を抱いて、そう願った。
「シェミーリムは優しいね。私、シェミーリムの事大好き。存在してはいけない私にそんな言葉をくれるんだから」
「存在してはいけない? 」
「……私は、世界を滅ぼすためにいるから。お姫様の意思は関係ない。これは、世界が頼んだ私の役目。必要であれば世界を滅ぼす。そんな存在いてはいけないでしょ? 」
どうして世界が世界を滅ぼそうとしているのか。疑問はあるけど、今はそれを考える時じゃない。
今は、この目の前にいる、初めて外を見る少女に、存在して良いんだって教えないと。
「そんな事」
突然水が押し寄せる。わたしは、咄嗟にエミシェルスを抱きしめた。
「……氷の王様、生命の王様、風の王様、お力を貸してください」
**********
シェミーリムとエミシェルスが、二人で他の川を探しに行った。
僕とシェージェミアは、近くにある川に入って、毒石を探す。
「シェージェミア、あの子全然気付いてないよ。もっと積極的に行ったら? 」
「一定の距離を保たないと、好きになったらだめだって逃げられる。何年も前からずっと好きだから、エミシェルスが、俺を好きでいてくれていると知っているから、犠牲になろうとする未来を潰してから告白する」
そうじゃないとエミシェルスは、自分の想いを隠してシェージェミアの想いを受け入れない。そんな事は僕も知っているけど……
「それよりどうなんだ? あれの方は。エミシェルスが納得できる答えが出ていれば良いが」
「……値しない。滅ぼすにも、守るにも値しない。この世界の運命に任せる」
僕は、エミシェルスが世界を滅ぼすかどうか。その判断をエミシェルスに直接任されている。シェージェミアにすればと言った事はあるけど、優しいシェージェミアには酷な選択をさせたくないと。
僕にはさせて良いのかとも思うけど、多分、本当の理由を隠すために、その場で思いついた言い訳なんだろう。
「それにしても見つからないね。毒石」
「ああ。エミシェルスの方にないと良いが……」
こんなにエミシェルスの心配をしているのに、エミシェルスはこれを、お姫様の手がかりだからと信じ込んでいるのは、お姫様がそうだったのかな。エミシェルスの話だと、もっと大胆で、素直で、純粋無垢な女の子って感じらしいけど。
でも、鈍感なのは、お姫様譲りなのかもしれない。
なんて考えながら、川の中毒石を探しているけど、これ大丈夫なのかな。
大雨で川の水がいつもより増えている。何事もなければ良いけど。
「……川の流れがいつもより速い。二人とも、大丈夫だろうか」
「うん。シェミーリムは祈りでしか身を守る方法を知らないから、いざという時に対応できないかもしれない」
「エミシェルスも、姫の力の届かない場所で何かあれば、身を守る術があるか怪しいところだ」
僕とシェージェミアは何があっても自分達である程度はなんとかできるけど、あの二人がそうとは思えない。
今まで見てきたシェミーリムは、世界に祈らないでできる事といえば、変化魔法くらい。
エミシェルスは、本人がお姫様の力がなければ何もできないと言っている。
心配にならないわけない。エミシェルスに何かあればもそうだけど、シェミーリムに何かあっても、今後に支障をきたす。
「……素直じゃないよな。俺らのやるべき事は全て忘れて、たまには自分のやりたい事でもやればどうだ? 」
「やりたい事って、そんなの思いつかない」
「……ダブルデート? 俺も、エミシェルスと二人っきりでデートとか不安しかない。甘やかしすぎないかとか」
甘やかす分には良いと思うんだけど。エミシェルスも、その方が喜ぶと思うから。なんでそれで不安になるのかが僕には分からない。
「あっ、星型の石発見」
「星型……なんだか、お姫様に見守られているって感じがするね」
お姫様は星で例えられる事があるから。星型のものを見ると、そう感じる。
「エミシェルスにも見せてやりたいな」
「うん。エミシェルスに見せたら、本当にお姫様に見守られているとか言うかもしれないね。エミシェルスなら、それが分かるから」
「ああ……また変な石見つけた。毒々しい色の石」
明らかに毒がありますって言いたげな、紫色の石。これが毒石なのかな。
「エミシェルスに見せてみる? 」
「ああ。確か、あっちの方に行ったよな。これを持って見せてくるか……って、浄化魔法使えば分かる事じゃないか? 」
「あっ、そっか。浄化魔法で浄化されればこれが毒石って事になるね」
「ああ」
とりあえず、浄化魔法で確認してみる。
これで、浄化されなければ、この石が毒石じゃないって事になるんだろうけど、浄化されてない。ハズレにしては、怪しすぎる石なんだよね。
「ハズレか。戻すか」
「待って。一応持っておこうよ。エミシェルスに後で見てもらうために」
「持っていっても偽物オチだと、エミシェルスに負担がかかるだけになりそうだが……一応持ってはおくか」
これは持っておくとして、毒石がないかもう少し探した方が良いのかな。
水の中の事だから、探すのが難しい。
――助けてあげて。あの子の事
「ヴェレージェ、今の」
「うん。何かあったかもしれない。行ってみよう」
さっきの声は、シェミーリムとエミシェルスが何かあった知らせだろう。早く行って助けてあげないと。
もし、あの子に何かあれば……
**********
二人がいたはずの場所は、僕達がいた場所より、川が増水している。
二人の姿は見られない。
「……流れ的にこっちだ」
「うん」




