13話 世界と姫のかけら
お昼の後は、世界に会わせたいっていうのがあって、帰った。
「……ここが……広くて迷いそう」
「一緒にいるから大丈夫だよ」
「うん……て」
手を繋いでいて欲しいのかな。お昼に知ったけど、エミシェルスは、成長を自在に変化させられるみたい。
今は、わたしとヴェレージェとの距離が遠いからって、わたし達と同い年くらいになっている。でも、中身は、外を何も知らない女の子。
わたしが手を繋いであげると、嬉しそうにしていた。
「……どこに行くの? 」
「創造の間っていう場所だよ。そこが世界と一番近い場所だから」
「……創造……懐かしいの」
エミシェルスは、姫の記憶を全てではないけど受け継いでいるらしい。懐かしさは、その記憶の中にあるのかな。
「シェミーリムは、創造の間が好き? そこへいて落ち着く? 」
「えっ」
そんな事考えた事なかった。創造の間は、祈りを世界に捧げる場所としか見ていなかった。
思い返してみると、創造の間は不思議な感覚がして、それが落ち着くんだよね。
エミシェルスに聞かれなかったら、こんな事考えなかったのかな。
「うん。落ち着く」
「そうなんだね。私も早く行ってみたい。世界様に近い場所。みんないるのかな」
「みんな? 」
「うん。みんな。世界の意思っていうのかな? そのみんな。シェミーリムは誰とお話ししているの? 」
目を輝かせてそんな事聞かれても、わたしは世界が一人じゃないって知らなかったから。
「……ぐぅ……プリンが好きなの」
「う、うん。プリンくらいならいくらでも用意してあげるよ」
そういえば、エミシェルスは、お昼を食べてなかった。理由を聞いてもはぐらかされていたけど、どうしてなんだろう。
プリンが好きって言うから、食べれなくはないと思うけど。
食べる必要がないからなのかな。あそこにいる間はかもしれないけど。
「……シェミーリムは、世界様の近くだと、全ての感覚が良く分からなくなるって時なかったの? 」
「ない……あっ⁉︎ 祈りの最中はそうかもしれない」
「私は、あそこにいる間、何も食べなくて大丈夫なの。何も感じなかった。外って不思議だね。私、だめって分かっていても、もっと外を知りたい。外を知って、この世界に生まれてきて良かったって思えるようになりたい。今の私は、生きている感覚すらないから……今までのかも」
これまでの自分を悲しんではいない。エミシェルスは、きっと、過去を見ていないんだと思う。未来を見ているのか、今を見ているのかは、まだわたしには分からないけど。
期待に満ちている。隣から見ていても、それが分かるくらい。
「そろそろ創造の間に着くよ」
「うん。ねぇ、シェミーリムは、ヴェレージェが好きなの? 」
「えっ⁉︎ ど、どうして」
「私の好きな人を見る時と似てるから。遠くからしか見てないけど。外の世界へ出れば、近づけるの」
なんか嬉しそう。否定しずらい。
ヴェレージェの事……そういう好きってわけじゃないよ。
それは、思わせぶりな事とか言ってくるから、ちょっと意識はしているけど。
**********
着いた。創造の間。
「……ここでお祈り? 」
「うん」
「……世界様、聞こえている? 初めまして、私はエミシェルス。彼の姫が残した、最後の卵から孵化した姫のかけらです」
祈らないと、世界と会話なんてできないんじゃ。
『ええ。存じております。わたくしは、ポポミュージュ。古くからお会いしたいと思っておりましたが、あそこを出て平気なのですか? 』
「うん。シェミーリム達が来るからおとなしく待っていたけど、近いうちに外へ出ようと思っていたから。愛しのあの人に会いたくて……」
頬を赤らめてる。本当にその人が好きなんだ。
『近いうちに会えるでしょう。今日は挨拶だけなのでしょう。また何かあれば呼びます。彼に会ってきてください』
「うん」
まさか、世界が姿を見せるなんて。とても綺麗な女の人。人の美しさしていないくらい綺麗で、見惚れてた。
「シェミーリム、ヴェレージェのところに行こ」
「う、うん」
**********
どうも放心中です。エミシェルスに連れられてヴェレージェの部屋訪問。
「ヴェレージェ、あの、その」
えっ、なにこの反応。もしかして、エミシェルスの好きな人って。でも、それなら、どうして、わたしにあんな事言ったんだろう。
同じ人が好きなら、自覚させないようにって黙っておくんじゃないのかな。
「シェージェミアなら、連絡したら会いたいって言ってた」
「ぴゅ⁉︎ ほ、ほんと⁉︎ 私に会いたいって? ヴェレージェじゃなくて」
「うん。君に会いたいって」
「……ヴェ、ヴェレージェ、お願いがあるの。あの、あのね、お洋服、可愛いお洋服と、可愛い髪型をしたいの。だから、手伝って欲しい」
そういう事ね。ヴェレージェが好きじゃなくて、ヴェレージェが一緒にいた人が好きだったんだ。
あれ?
そういえば、二人って初対面だよね?
なんか初対面とは思えないんだけど。エミシェルスの好きな人を知っているとか。
「ヴェレージェ、エミシェルスと前に会ってた? 」
「うん。遠くから。互いの名前すら知らなかったけど」
「うん。シェージェミアと一緒に来てくれていた。それを見ていて、すきになったの。シェージェミアはいつも、私に笑顔を向けてくれたから。遠くから、話を聞いてくれたから。だから、シェージェミアの事は知っていたの」
恋するエミシェルスが愛らしい。応援したくなる。
エミシェルスは、私も同じ顔をしているって言っていたけど、応援したくなるような顔なのかな。
そんな顔していたとは思えないけど。
「エミシェルス、さっきの話だけど、君は今のままでも十分魅力的だよ。無理に取り繕うとせず、君は今のままの君で大丈夫だよ」
こんな事言われたらときめきそう。エミシェルスは、どうなんだろう。
「うん。今の私でも、シェージェミアは何も言わないと思うけど、少しでも可愛いところを見せるの。好きな人と会うのは戦場なの」
全然ときめくとかなさそう。
「……シェージェミアが同じ事言ったら、肯定しそう。僕をシェージェミアだと思って、さっきと同じ事言ってみてよ」
「……み、魅力的かもしれないけど、私、もっと、可愛い姿見て欲しい。シェージェミアが、私をす、好きになって欲しいの。他の女の子より、私が良いって、言って欲しい」
恋する乙女可愛すぎる。もじもじしながら、頬を赤らめてこんな事を言うなんて。
あと、言い方が変わっているだけで、言ってる事はそんなに変わってない。なのに、どうしてこんなに可愛く見えるんだろう。
「……クゥロレボから、ちょうどシェージェミアがいる近くの村を教えてもらったから、会えると思うけど、可愛くしていくと動きにくくない? 」
「女の子は、可愛さと動きやすさを両方重視したお洋服を着るの。明日なら時間ないから……シェミーリム、いらない布って持ってる? 」
「それなら僕が持ってるよ。これで良い? 」
収納カバンにそんなのまで入れていたなんて。
「ありがと。これで、ここならできる気がする」
なんの魔法だろう。布から服ができた。
「これは可愛い。これで勝負に出るの」
勝負って言ってる。恋する乙女には、好きな人と会うのが決戦の場か何かなのかな。そういえば、戦場とも言っていた。
「ヴェレージェはすきな人いる? 好きな人の前だと格好つけたいって思わないの? 」
「いるけど、思わないかな。ありのままを見てくれれば良いよ」
「誰? 」
「エミシェルスとか? 君は眼中にないだろうけど、僕の初恋だよ」
なんだろう。今、ちくってした。気のせいだよね。
「初恋……そう。でもごめんなさい。私、シェージェミアのように、かっこいい人がすきなの。だから、私の事は諦めて。もしシェージェミアに振られても、恋はしないから」




