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12話 姫の生まれた場所


 相変わらず雨はやまない。今までは晴れていたけど、今は、わたしも雨が降っている。


 このままで良いのか。本当に助けるべきなのかとも考えてしまう。その度に、考えないようにする。


「……」


「シェミーリム、この先坂道になっているから気をつけて」


「……うん」


 坂道は気をつけないと。


 今、わたし達は、世界が手紙に書いてあった場所に向かっている。そこに直接転移はできなかったから、かなり歩かないといけないみたい。


「……シェミーリム、君が気に病む事なんてないよ。お姫様の呪いだと言うなら、そう言わせておけば良い。お姫様を良く思わないとどうなるか、いつか身をもって知るはずだから」


「えっ? 」


「……とにかく、君は何も気に病まずに、世界征服を阻止する事だけを考えていれば良いんじゃないの? 世界制服を止めないと、そういう人達以外も巻き込まれるんだから。それこそ、お姫様は望まないよ」


 そうだよね。止めないと、多くの人が巻き込まれてしまう。


 そうなる前に止める。今はその事を最優先にしないと。わたしは、世界を守らないといけないんだから。


 誰かのためじゃなくて、世界のために。


「あっ、この石、光ってる。宝石かな? お姫様がいた場所の周りには、宝石が落ちているって噂があるから」


 どんな噂とは思うけど、本当に宝石にしか見えないものが落ちていると、それを言えなくなる。


「シェミーリム、宝石の花まであるよ。本当にこの辺って色々あるよね。お姫様のお力が満ち溢れているから。こんな珍しいものまであるらしいんだ。ちなみに、これが禁止区域の理由の一つ」


 姫のお力……こんなにすごいものなんて。時が経ったとしても、消える事がない。突然姿を消しても世界にその存在を知らしめている。


 ……姫って、宝石とかが好きだったのかな。お力が満ち溢れている影響で、好きなものが生まれているって話は、世界から聞いた事がある。


「姫は、宝石が」


「宝石じゃなくて綺麗なものが好きらしいよ。宝石の花とか、石のように地面に転がっていると、光が反射して綺麗らしいよ。今日は大雨で見れないけど、いつか見てみたいよね。晴れのこの景色」


 宝石は、ぽろぽろと散らばっている。この宝石が全て光に反射して光ると、どれだけ綺麗なんだろう。


 姫は、その景色が好きだったんだね。わたしも、その景色を見てみたい。


「着くまで疲れるって、行く前までは思うけど、実際にこうやって行くと、疲れなんて感じないよね。大雨ならではの綺麗な景色が見れるから。あの虹とか。どうしてできているかは分からないけど」


 光の反射とかないのにどうやって虹ができるのかは分からないけど、本当に綺麗。こういう景色をずっと見られるなら、歩いていて疲れが感じないもそうだけど、時間が過ぎていくのも忘れそう。


「あれじゃない? お姫様が住んでいた場所。屋根にまで宝石が散らばってる」


 普通の古い家って感じ。変わったところは特にないと思う。でも、ここにいるだけで癒されるような感じがするのは、普通じゃないかもしれない。


 今まで、歩いてきて、足の疲れがあったはずなのに、その疲れが消えている。


「不思議な感じがする」


「うん。お姫様は、癒しに特化していたって噂があるから、その影響なんだろうね。疲れを癒してくれるからゆっくりとしていられる」


「うん。異変を解決とか考えられなくなるよね。少しだけゆっくりしていく? 」


「うん。そうだね。少し休憩してから、異変を探そうか」


 異変を探すのが大事なのは分かるけど、こんな場所だから、少しだけ休憩したいって思っちゃう。


      **********


「……だれ? 」


 髪の長い女の子。五歳くらいかな。こんな場所に人なんていないはずなんだけど。


「……お客さんが来る予定なかったはずだけど、だれ? 」


「お姫様……」


 お姫様?


 もしかして、この子があの姫なの?


 姫って言うから、もっとお淑やかで、品のある感じの女の子を想像していた。でも、なんというか、普通の女の子と変わらない気がする。雰囲気は少し異様な感じがするけど。


「お姫様? 違う? 違わない? ……私は、そのお姫様のお力で最近孵化したの。あなた達の言うお姫様と、お姫様の最愛の人との子供。名前は、エミシェルス。あなた達は? なんて言うの? 」


「わたしはシェミーリム」


「僕はヴェレージェ」


 エミシェルスが、わたし達の名前を聞くと、ふんわりと微笑んだ。


「シェミーリム、ヴェレージェ、私を、お外に出してくれるんだよね? 私、ずっと昔にできなくなったけど、未来視ができたの。それでね、二人が私に外の世界を見せてくれるって視えたの」


 エミシェルスは姫に最も近しい存在。そんな子を気軽に外に出して良いのかな。


 エミシェルスが姫の存在証明になるからこそ、ここで安全に暮らしていた方が良いと思う。


 でも、こんなにも期待に満ち溢れた顔をされると断りずらい。


「……どうして僕達が外に出してくれるの? 君の安全を考えれば、出さない方が良い」


「そうかもしれない。でもね、連れ出してくれるの。あなたにとって、私は必要だから」


 ヴェレージェがエミシェルスを必要としている?


 姫に関係があるからなのかな。


「……分かった。連れて行くよ。君がいれば、もし怪我したとしてもすぐに治せるからね」


「うん。全て癒してあげる。それが、私にできる事だから。世界様に頼まれた、あの男の子の家族の時みたいに」


 男の子の家族って、クゥロレボの彼女がいた町の事だよね。


 あの時、病を治してくれたのは、エミシェルスだったんだ。でも、どうして、世界はわざわざエミシェルスに頼んだんだろう。


「……そういえば、ずっと大雨だね。そろそろ晴れを見たい」


「えっ」


 晴れた。わたしが祈っても、晴れなかったのに。


「あなた達の言うお姫様のお力が強い場所だけ、こういう事ができるの。そこ以外だと、できる事は少なくなるけど」


「それでも、すごいよ。これからよろしくね。エミシェルス」


「うん。よろしく。ヴェレージェ。本当は、もう一人の子……シェージェミアにも会いたかったけど」


 もしかして、ヴェレージェが、あの時話していた人の事かな。それも、未来視で知った事なのかな。


「シェージェミアは、自分の国の事で忙しいから、しばらくは会えないかな。僕も会いたいけど」


「そうなんだ……会ってみたかったのに。あっ、そろそろお昼の時間だね。私、料理はちょっとだけできる気がするから、ご馳走してあげる」


 そういえば、お昼そろそろだった。ご馳走様してくれるなら、お言葉に甘えさせてもらって良いのかな。


「えっと、悪いんだけど、それは遠慮しておくよ」


「えっ、でも」


「シェミーリム、エミシェルスは多分、料理できない。そもそも、料理した事すらないと思う」


「……なんで知ってるの? もしかして、知っていたの⁉︎ 」


「……お姫様の事を考えれば、そうかなって。僕料理できるから、教えてあげるよ」


 料理できそうな感じで言っていたけど、できなかったんだ。それで、ヴェレージェは遠慮するなんて言ったんだね。


 姫のそんな話は知らなかったから、そうだとは思わなかった。知っていたとしても、姫の力があって生まれただけで、そこまで姫の要素があるとは思わなかったかもしれないけど。


「……教えてもできないかも? できるかも? 」


「できるかもしれないよ。いくらお姫様が料理できないとしても、君とお姫様は違うんじゃないの? 」


「……違わないの。というか、あなた達の言うお姫様は、お料理できるから。教えてもらったらできるから。簡単なものだけだけど、作れたの知らない? 」


 エミシェルスは、姫の正しくない噂を即否定するくらい、姫の事が好きなのかな。


 それに少し怒っているみたい。


「ごめん。そうだったんだね。なら、簡単な料理を教えるよ」


「うん。シェミーリムも一緒に教えてもらおうよ」


「えっ、うん」

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