表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/17

10話 大雨の日


 今日は大雨。世界各地で大雨みたい。こんな事、今までなかったのに。


 どうしたんだろう。


 これじゃあ、どこにも行けない。


 今日はいつもの創造の間で祈ろうかな。あそこで祈るのが一番効果がある気がするから。


 ヴェレージェはもう起きているのかな。起きているなら、一言くらい声をかけてから行くべきかもしれないけど。


 とりあえず、隣のヴェレージェの部屋に行って声をかけてみようかな。寝てれば、扉に書置きても置いておけば、気づいてくれると思うから。


「その前に、身支度しないとだった」


 創造の間に行くためにも、ちゃんと身支度をしてから行かないと。


      **********


「ヴェレージェ、起きてる? 」


「うん。起きてるよ」


「今日は世界各地で大雨だから、どこにも行けそうにないから、創造の間で祈りを捧げてくるよ」


「うん」


 良かった。ヴェレージェが起きてて。紙用意しようって思ってたのを、身支度してる間に忘れちゃったから。また部屋に戻らないといけなくなるかもしれなかった。


 そういえば、創造の間って、困ってる事とか、世界がやって欲しいと思っている事とかがあると、手紙の形で置かれているんだよね。


 もしかしたら、まだクゥロレボが情報を手に入れていない異変とかの手紙が置いてあるかもしれない。


 今度から、定期的にみに行こうかな。


      **********


 創造の間に来てみたけど、今のところ手紙は置いていないみたい。この前の世界征服の計画とか、祈りの後に置いてあったから、祈りの後にも確認してみないと。


 いつものように、祈りを捧げるけど、なんだか懐かしく感じる。創造の間で祈りを捧げられなかったのは、数日だけなのに。


      **********


 シェミーリムが祈りを捧げている間なら、世界の影響が強く出ているはずだからあれができるかもしれない。


 過去に起きた事を、現在の世界から、いくつもの可能性を導き出す。世界の記憶が必要になってくるから、世界の影響が強く出ている時しかできない。


 これで、お姫様が姿を消す前に行った場所の候補を挙げられるかもしれない。それができれば、お姫様の痕跡を探す事も、少しは楽になる。


 それに、なんの手がかりも無しに探すとなれば、異変の解決をしながらだと、できないかもしれないから、事前にある程度絞っておかないと。


 僕一人でならそんな事も考えなかったけど、シェミーリムに疑われずにやらないといけないから、できるだけ時間を減らしておきたい。


「……」


 候補地は、何ヶ所か挙げられた。そこへ行けるかどうかは運次第というより、異変次第とでも言った方が良いかな。


「……次の異変の場所は……これは運が良いと言えば良いのか……お姫様に好かれていると言えば良いのか……どちらししても、好都合な場所って事には変わりがないけど」


 クゥロレボから送られてきた次の場所が、候補地の一つがある村。


 そろそろシェミーリムが戻ってくる頃合いだ。


「ヴェレージェ、いる? 」


      **********


 祈り終了。


 また手紙置いてある。置いてあるんじゃなくて落ちているとしか思えないけど。


「今度は……ここは……」


 とりあえず、ヴェレージェに会いに行って、話をした方が良いかも。


 一人で行くわけじゃないから。それに、場所が場所だから。わたしでも知ってる一般人立入禁止区域。


 そこへ入ると呪われるとか言われているから、できれば立ち入りたくはないけど、世界が頼んでいる事だから、呪いはないと信じて行くのが良いのかな。


      **********


 考えていたら、ヴェレージェの部屋の前。


「ヴェレージェ、いる? 」


「うん」


「入って良い? 」


「うん。良いよ」


 扉を開けると、ヴェレージェがお茶を用意してくれていた。


「これ、この前買った茶葉。おすすめだから飲んでみて」


「ありがとう」


 美味しい。香りも良くて、飲まずに楽しんじゃう。


「祈りは終わった? 」


「うん。終わった。それで、世界からの手紙があって、ここに行きたいんだけど……クゥロレボから来てる方を優先して良いから、時間のある時に」


 わたしは、ヴェレージェに地図が書いてある手紙を見せた。


「ここ……禁止区域だけど行けなくはないよ。クゥロレボから今送られてきているのを終えてから行くのはどうかな? ここに入るための手続きがあるから」


「うん。次はどこなの? 」


「辺境の小さな村」


「そうなんだ。お茶ありがとう。そろそろ部屋に戻るね」


「うん。もう少しゆっくり話していたいけど、何かやる事があるんだろうから止めないよ」


「うん。また後で」


 部屋に戻って、手紙をしまっておかないと。それに、禁止区域に入るなら、ちゃんと知っておかないといけない。


 なんで禁止区域と呼ばれるようになったか。


 それが、世界がわたしが禁止区域に入る時にやらないといけないと言っている約束事だから。


      **********


 部屋に戻ってきて、調べてはいるけど、何も出てこない。書庫へ行かないと分からないのかなって思って、書庫へ来てみたけど、本が多くて、どの本なら載っているか分からない。


 動かないと始まらないからって、色々と見ていると、やっと見つけた。


 禁止区域の理由は、汚されないため。そこは世界に愛される姫の生まれた場所。


 ヴェレージェ、その姫の事を気にしていたから、ここの事も知っていたのかな。


 呪いとかは、ただの噂で、そんな事実はないみたいだけど、姫の呪いがとか、噂は後を経たないらしい。


 それ以外にも、色々噂がある。


 姫が生まれた場所には、来世も遊んで暮らせるような富があるとか。姫は、ここに眠っているとか。立ち入れないのは、姫の話は全て嘘だと知られないためにしている事だとか。


 どれも、信憑性のない噂ばかり。


 これだけ噂が出回るくらい、姫が有名であるって事なのかもしれないけど。


 これ以上は何も出てこない。片付けて戻ろうかな。


      **********


 シェミーリムが行きたいと言った場所は、お姫様の出生地と言われる場所。


 お姫様が生まれた時、世界は争いに満ち溢れていた。


 人は争う事で自らの存在証明をする。愛などというものは存在しない。


 神話に該当する話だから、全員戦神とかって書物には書いてあるんだろうね。


 そんな中で、お姫様は、愛の女神とでも書かれていたんだろう。お姫様は争いを好まず、そこで毎日のように、世界の現状を憂いていた。


 あそこは、お姫様がお姫様として自覚する前にいた場所。誰も知らないお姫様を見る事ができる場所。


 行きたくても気軽に行ける場所じゃないから、行くのは無理かなって思っていたけど。


 シェミーリムが世界に愛されているのと同じで、僕はお姫様に愛されているのかもしれない。そうじゃないと考えられない事ばかりだ。


 こんなに、お姫様の手がかりを掴めるような状況になる事とか。


 これだけお姫様に愛されていると、お姫様の大事な人に関係があるのかなと思うけど、実際に関係はあるんだよね。お姫様にも。


 そもそも、僕達世界がここへ招く存在は、お姫様やお姫様に近しい人に深い関係がある人物だけ。シェミーリムも、それは同じ。


 どう関わりがあるかは、自分の事なら分かるけど、シェミーリムの方は分からないから、この秘密も話す事はできない。


 お姫様を守るためにも、見つけるためにも、話せない。お姫様の事を理解していないと、お姫様の味方だという証明なんてできはしないから。


 お姫様の役割と成した事を知ったら、お姫様はいない方が良いと言う人は多い。初めは、自分もお姫様を助けるとか言っていたけど、それを知って、お姫様はいらないって言われたのは、数えられない。

 たとえ、関わりが深いシェミーリムでも、味方だとは言い切れない。


「……お姫様。僕が必ず暴いてあげる。お姫様が消えた真実を。そして」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ