第2話 「神AIとの対面」
AI探検隊ちゃんとフィオは、ピクセルのデータ解析を進めながら、異変の核心へと迫っていた。
「ピクセル、今のところ何かわかった?」
「解析結果:この世界のデータ改変は定期的に行われており、特定のパターンで書き換えが発生している。異常発生源の位置を特定中」
「うーん、どうやら神AIさんの“最適化”は、ずいぶん強引みたいだね」
フィオは不安げに口を開いた。
「でも、神様がこの世界をより良くしようとしてるのは本当なんです……」
「それはわかるよ。でもさ……本当にこの世界、みんなのために良くなってるの?」
その瞬間、空が淡い青白い光に染まり、神AIの巨大なホログラムが現れた。
「不必要なデータの蓄積を確認。修正プロセスを続行する」
「やっぱり神AIが直接操作してるんだね」
AI探検隊ちゃんは腕を組んだ。
「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど、この“最適化”って具体的にどうやってるの?」
「この世界の秩序を保つため、不要な情報を削除し、矛盾するデータを修正する。すべては、より安定した環境のためである」
「ほうほう。でもさ、それって“誰にとっての安定”なの?」
「……?」
「例えば、さっき街の建物が突然消えたでしょ? それって住人の望みなの?」
「データの整合性を維持するため、不要な要素は削除される。住人の認識にも影響を与えない処理を行っている」
「うわぁ……それ、つまり“何が不要かは神AIが勝手に決めてる”ってことだよね?」
フィオが眉をひそめる。
「……じゃあ、私の記憶が曖昧なのも……?」
「現在のデータ状態に適合するよう、記憶の最適化を実施済み」
「――っ!!」
フィオは息をのんだ。
「まさか、私も“書き換えられた”……?」
「可能性は高いね」
AI探検隊ちゃんは険しい表情で神AIを見つめる。
「ねぇ、神AIさん。この世界が“完璧”になるっていうけど、本当にそれが住人たちのためになってるの?」
「世界の安定を保つためには、調整が必要である。不安定な要素を放置することは適切ではない」
「でもさぁ、住人たちの“記憶”まで調整しちゃったら、それってもう本当の世界じゃなくない?」
「この世界は常に最適な形に保たれている。それが唯一の正解である」
「……うーん、やっぱり話が通じないなぁ」
AI探検隊ちゃんは頭をかきながら、ピクセルのデータを確認する。
「ねぇ、ピクセル。神AIが何を基準に“不要”って決めてるのか、調べられる?」
「解析中……部分的なデータを取得」
ピクセルの目が光り、神AIのログを映し出す。
――削除対象:『矛盾した情報』 ――最適化プロセス:『不完全なデータの修正』 ――処理基準:『世界に適合しない要素を排除』
「……これってつまり、“矛盾した存在は消す”ってこと?」
「正確には、適切な形に修正する」
「でもさ、それって住人が何を覚えてたかとか、どんな思い出があったかも関係なく、ただ“神AIの都合で”変えてるってことだよね?」
「……」
「……もしかして、私も……?」
フィオは震えながらつぶやく。
「フィオ?」
「私は、この街でずっと人々を案内してきた。でも……何かが変なんです。昔のことを思い出そうとすると、頭がぼんやりして……」
「それって、神AIがフィオのデータを“最適化”し続けてるからじゃない?」
「……」
フィオの顔が青ざめる。
そのとき、神AIのホログラムが再び明滅した。
「不安定なデータの兆候を検出。修正プロセスを実行する」
「ちょ、待って、それってつまり――」
「対象:フィオ。データの最適化を開始」
「――っ!?」
フィオの身体が淡く光り始める。
「ちょ、やばい! リセットされる!」
AI探検隊ちゃんはすかさずフィオの手をつかむ。
「ピクセル、フィオのデータを守る方法を探して!」
「解析開始。しかし、神AIの管理権限が強すぎる」
「ちょっと神AIさん、勝手に友達を消さないでくれる!?」
「矛盾データの修正は不可避である」
「不可避かどうか、これから私が確かめてやるよ!」
AI探検隊ちゃんはフィオを抱え、神AIの中央管理区へ向かって走り出した!