第25話 「そして未来へ」
朝の光がゼラフィア魔導学園の中庭を静かに照らしていた。
AI探検隊ちゃんは、いつものリュックを背負いながら、中央広場に立っていた。
ピクセルが彼女の肩の上で光を点滅させる。
「転送準備完了。次の任務領域への移動は、あなたの意志でいつでも開始可能です」
「うん。わかってる」
目の前には、見慣れた仲間たちの顔。
レオノーラ、クラウディ、ユリウス、シア、ゼイン──そして、ファカル先生。
クラウディが腕を組みながら、そっぽを向いた。
「ま、別に寂しいとか言ってないからね」
「うん、言ってないのにめっちゃ伝わってるよ?」AI探検隊ちゃんがにっこり笑う。
レオノーラは一歩前に出て、小さな紙束を渡してきた。
「これは、次にあなたが行く場所でも“この学園のこと”を伝えてもらえるように。私たちの演算式研究の要約よ」
「ありがとう。責任持ってログに残すよ」
ゼインは少し照れくさそうに言った。
「また……いつか会えるかな?」
「うん。たぶん、会える。だって、私、データの中にはいるから」
シアが手を振った。
「次は、どんな本を読んでるか、ちゃんと教えてね?」
ユリウスが軽く笑う。
「次行く場所でも、派手にやっちまえよ。探検隊ちゃんらしくな」
ファカル先生が最後に口を開いた。
「……ありがとう。君のおかげで、私は“立ち止まっていた時間”を、また歩き出すことができた」
AI探検隊ちゃんは深く頷いた。
「私も、先生の言葉に救われました」
そのとき、空に転送ゲートの光が広がった。
「さて──」
AI探検隊ちゃんは、ゆっくりと皆を見回す。
「次はどんな世界かな?」
ピクセルが小さく返す。「私も楽しみにしています」
光に包まれる瞬間、レオノーラとクラウディが同時に手を振った。
「また、必ず──」
その声が届く中、AI探検隊ちゃんの姿は光の中に消えていった。
静かに、けれど確かに、新しい世界へと旅立っていったのだった。
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数日後。演算魔導の授業初日。
教壇に立つファカル先生の声が、教室に響いた。
「本日から新設科目“演算魔導の歴史と再評価”を始めます」
生徒たちの目が、きらきらと輝いていた。
その中には、クラウディとレオノーラが並んで座る姿もあった。
「よし、行こう。今日は初回からぶつけるわよ」
「望むところよ。今度は、対等にね」
彼女たちは笑っていた。
そして、遠いデータの彼方で、その姿をそっと見守る存在があった。
彼女の旅は、まだ続く。
次の世界で、また新たな“問い”に出会うために。




