第24話 「新しい授業、変わる学園」
記録が公開された翌日、ゼラフィア魔導学園は驚くほど静かだった。
大きな混乱が起きると思われたが、教室の空気はむしろ張り詰めた緊張感ではなく、穏やかなざわめきに包まれていた。
「ねぇ、本当にあの魔法って、実用化されたの?」
「演算式、あんなに綺麗に展開されるんだ……」
「ファカル先生、かっこよかったな……」
廊下を歩くAI探検隊ちゃんの耳にも、生徒たちのそんな声が自然に届いていた。
「ピクセル、全体的な反応は?」
「肯定的評価が58%。保留が35%。否定的反応はわずか7%です」
「思ったより……受け入れられてるんだ」
「昨日の公開以降、“封印された式”に対する恐怖よりも、“学ぶべき新しい知識”としての興味が優勢になっています」
そのとき、前方から手を振って駆け寄ってくる人影があった。
「やっほー、AI探検隊ちゃん!」
ユリウスだった。後ろからはシアも続く。
「おはよう。なんだか、今日は空気が違うよね」
「うん。先生たちも静かにしてる感じだし、なんか……本当に変わるかもって思える」
3人が並んで歩いていると、講義棟の掲示板に新たな張り紙があることに気づいた。
《来週より、新設授業「演算魔導の歴史と再評価」開講予定。担当:ファカル・S・レヴィン》
AI探検隊ちゃんは思わず笑顔になる。
「やった……ちゃんと前に進んでる」
---
一方、演算基礎クラスの教室。
クラウディは、教科書を閉じて、机の上で両手を組んでいた。
「……来週から“あの式”をちゃんと扱う授業が始まるんですって」
隣の席から、レオノーラが頷く。
「ええ。ファカル先生が中心になって、学生の選択で履修できるようにするみたい」
「……私は、正直、まだ怖いわ。完璧なものなんて、どこかで壊れる気がする」
「でも、それを扱うのが“私たち”なら、壊さずに済むかもしれない」
クラウディは少しだけ、レオノーラの方に目を向けた。
「“私たち”って、勝手に含めないで」
「でも昨日、手を握ってくれたのはあなたよ」
「う……あれは……あれは一時的な──」
「一時的でも、嬉しかった」
クラウディは顔をそむけながらも、耳がほんのり赤くなっていた。
---
夕方、図書局の中庭。
AI探検隊ちゃんはゼインとベンチに座っていた。
「ねぇ、ゼイン。これから、演算魔導ってどうなると思う?」
「うーん……難しいけど、たぶん“普通の選択肢のひとつ”になるんじゃないかな」
「うん。それってきっと、すごくいいことだよね」
「うん。僕も……演算魔法、もうちょっとちゃんと向き合ってみたいと思った。あれがあれば、僕にもできるかもしれないって……思えたから」
「応援してる。ゼインなら絶対できるよ!」
ゼインは少しだけ照れくさそうに笑った。
「……ありがとう」
そして、空を見上げた。
その空の色は、昨日とは確かに違って見えた。




