表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/27

第23話 「記録の光、揺れる学園」

 ゼラフィア魔導学園の講堂ホール。


 そこに集められたのは、生徒と教師を含む関係者のほぼ全員。通常の連絡会とは明らかに異なる緊張感がホールを包んでいた。


 壇上には、学園長代理と並んで、黒衣の監査官──魔導庁・研究監査局局長、エルシオンの姿があった。


 銀髪をきっちりと結い、隙のない表情を張り付かせたその目は、見る者すべてを値踏みするような鋭さを持っていた。


「……本日は、演算魔導に関する一連の情報漏洩、ならびに不正研究活動について、事実確認と聴取を実施する」


 その宣言と同時に、ホール内のざわめきが強まる。


 だが、そのざわめきを静かに切り裂くように、一人の少女が歩み出た。


「待ってください」


 AI探検隊ちゃん。その手には、小型のホログラム投影装置。


「私には、“記録”があります。この学園で、過去に何があったのか──私たちが、何を見つけたのか。それを、今ここで公開させてください」


 エルシオンの目がわずかに細められる。


「許可はしていない」

「でも、必要だと思っています。これは、学ぶ者たちにとって、“知らされるべき真実”です」


 静寂。


 レオノーラが立ち上がった。


「私も、それを見届けたい。未来のために」


 続いて、クラウディが言葉少なに。「……あたしも。責任、あるから」


 シア、ユリウス、ゼイン。次々と立ち上がる仲間たちの姿に、ホールの空気が変わっていく。


 AI探検隊ちゃんがホログラムを起動する。


 映し出されるのは、旧研究棟で発見された実験記録、ファカル先生の個人ログ、そしてコード・オメガ=フレームの成功記録。


 「完璧な演算魔法」は、確かに危険も内包していた。だがそれは「扱う側」の未熟ゆえであり、正しく運用されれば、魔導の未来を変える革新だった。


 映像が終わると、場内には沈黙が訪れた。


 それを破ったのは、壇上のエルシオンだった。


「……感情的な訴えには意味がない。学問において最も重要なのは、秩序と管理である」

「それは、“過去”の学問の話です」


 声を発したのは、ファカル先生だった。


 静かに壇上へ歩み出るその背筋は、老いてなお真っ直ぐだった。


「私は若い頃、あの魔法を信じた。だが、あのとき何も言えなかった。だから、私は今ここで言います。あの魔法は、“未来を開く魔法”だと」


 ざわ……とホールが揺れる。


「これからの魔導は、“選ぶこと”ができなければならない。旧い理論に従うか、新しい可能性に向き合うか。それを決めるのは、“学ぶ者”たち自身であるべきです」


 その言葉に、学生たちの中から自然と拍手が起こる。


 それは少しずつ広がり、やがてホール全体を包んだ。


 壇上のエルシオンが口を開いた。


「……本件に関する処置については、後日、庁にて再検討を行う」


 そう言って、彼は踵を返し、無言でホールを後にした。




---




 講堂の外。夜の風が吹く中、探検隊ちゃんはホログラム装置を抱えて立っていた。


「……終わった?」

「いいえ、始まったばかりです」


 ピクセルの言葉に、探検隊ちゃんは微笑む。


「うん。これでようやく、進めるね」


 遠くで、拍手と笑い声が響いていた。


 それは、変化の始まりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ