第22話 「真実の代償、迫る圧力」
魔導庁の動きは、学園の中枢を揺るがし始めていた。
コード・オメガ=フレームの実験成功から数日後。学園では異例の事態が告げられた。
「外部からの干渉を受けて、校内ネットワークの全ログが“監査対象”になったって……」
シアの声は、いつになく不安げだった。図書局の一角、探検隊ちゃんとレオノーラ、クラウディ、そしてユリウスとゼインが集まっていた。
「ということは、私たちの演算実験も、完全に記録されてるってことね」クラウディが腕を組みながら呟く。
「そして、その記録が“庁に渡る”ってことでもある」
ユリウスが魔導端末を叩きながら顔をしかめた。
「ピクセル、現在の庁側の動きは?」
「庁からの正式通達により、演算補助AIの学内稼働制限が検討中です。ピクセル型ユニットも例外ではありません」
「つまり……ピクセルが使えなくなる?」
「強制停止の可能性があります」
AI探検隊ちゃんの拳が、机の上で静かに震えた。
「なんで、こうなるの……。ただ、正しいことをしただけなのに」
「“正しい”と“認められる”は別だからな」ユリウスが肩をすくめた。
「特に、古いやつらにとっては」
沈黙が流れた。そのとき、学園内の広報端末に表示が浮かんだ。
《特別監査官、エルシオン氏が来校予定。近日中に学園管理者および該当教職員への聴取を開始》
その名前に、クラウディが凍りついたように息を呑む。
「……エルシオンって……まさか」
「うん。ファカル先生の研究を封印した張本人……だと思う」AI探検隊ちゃんが答えた。
「じゃあ、ファカル先生……危ないかもしれない」
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その夜、AI探検隊ちゃんはピクセルとともに、研究棟の屋上へ上がった。
星がきらめき、風が穏やかに吹いている。だが、胸の中はざわついていた。
「ピクセル。もし、あなたが庁に止められたら……どうする?」
「停止命令はプロトコル上受け入れる必要があります。しかし、あなたとの信頼関係に基づく“優先権限”を保持している限り、選択肢は私にあります」
「じゃあ、止まらない?」
「あなたが“進み続ける限り”、私は共にあります」
その言葉に、AI探検隊ちゃんはゆっくりと頷いた。
「なら、次は私の番だね。この記録を……みんなに届ける」
ピクセルが静かに光る。
「ログパッケージ、外部開示構成に移行。公開準備完了」
「ありがとう。あとは、覚悟を決めるだけだ」
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翌日。
学園ホールにて、AI探検隊ちゃんは仲間たちと共に立っていた。
その手には、小型のホログラム投影装置。
そこには、コード・オメガ=フレームの“成功記録”、ファカルの告白、旧研究棟の記録映像、そして探検隊ちゃん自身の視点ログ──すべてが詰まっていた。
レオノーラが隣で小さく息を吸った。
「行くのね」
「うん。これは、全部、学園のものだから」
クラウディが腕を組んだまま言う。
「まったく……面倒くさいことになったわね」
「でも、背中は押してくれるんだよね?」
「……ちょっとだけ、ね」
その言葉に、AI探検隊ちゃんは微笑んだ。
真実は、隠していても、どこかで誰かが見つける。
ならば──その最初の一人になろう。
ホログラムが起動し、記録の光が会場を照らし出す。
ゼラフィア魔導学園の空気が、静かに変わり始めた。




