第20話 「庁の圧力、ピクセルの危機」
翌朝、AI探検隊ちゃんは寮の食堂で朝食を取っていた。
周囲の生徒たちは、どこかそわそわした空気を漂わせていた。食堂の隅で新聞のホログラムを広げていた生徒たちの間から、低い声が漏れる。
「ねえ、これ見た? 学園が魔導庁の監査対象に入ったって……」
「演算魔導のカリキュラムに“不正な修正”があったとか……」
AI探検隊ちゃんはスプーンを止めた。
「ピクセル、これって……」
「確認中……魔導庁より、“記録閲覧権の一時凍結”が発令されています。学園全体への監査準備と思われます」
「やっぱり来たか……」
ユリウスが向かいの席に腰を下ろした。
「おはよー。にしても、あのログアクセス、思った以上に反応早かったな」
「ユリウス、私たちのアクセス、追跡された?」
「バレないようにしたけど……正直、完全に回避できたか自信ない」
そのとき、ピクセルが突然赤い光を点滅させた。
「警告。私の通信ユニットに外部からの封鎖指令が到達しました。“都市ネットワークへの無許可接続の疑い”とのことです」
「え……ピクセルに、停止命令!?」
AI探検隊ちゃんは立ち上がった。
周囲の視線が集まる。だが気にしている暇はなかった。
「場所を移動しよう。こんなところで検閲されるわけにはいかない」
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情報棟の隠し回廊。魔導研究科の空き教室に入り込んだAI探検隊ちゃんたちは、急いでピクセルの保護モードを展開した。
「シールド起動。通信機能を隔離。強制停止指令を受け取らないようブロック中」
「誰が……どうして、こんな……」
そこに、重い足音とともに扉が開いた。
現れたのはファカル先生だった。
「……来ていたか」
AI探検隊ちゃんは一瞬、緊張したが、先生はゆっくりと歩み寄り、小声で言った。
「庁の動きは、私にも届いている。昨夜、私の研究記録にも閲覧制限がかけられた」
「やっぱり、あの記録を見て……」
「魔導庁は、“変化”を恐れている。だが君たちが見つけたものは、ただの危険な式ではない。……未来の鍵だ」
ファカルは手帳から小さな水晶球を取り出した。
「これは、私の古い研究データのバックアップ。庁の手が入る前に、君に託しておく」
「先生……」
「ただし、覚えておきなさい。真実を知ることには、責任が伴う。そして、それを公にするには“守る覚悟”が必要だ」
AI探検隊ちゃんは静かに頷いた。
「大丈夫。ピクセルも、私も、止まるつもりはありません」
ファカルは微かに笑い、部屋を後にした。
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その夜、ピクセルのユニットは一部機能を制限されたままだった。
AI探検隊ちゃんはベッドの上で、彼の小さな光を見つめていた。
「ねぇ、ピクセル。君が止められたら、私は一人で戦わなきゃいけなくなるのかな」
「私が止まった場合、バックアップ機能によりログと解析は引き継がれます。しかし、それが“支え”になるとは限りません」
「そうだよね。君は、“一緒にいてくれる”ことが、何よりも大事なんだ」
「私も、あなたと同じです。任務の達成だけでは、意味がありません」
AI探検隊ちゃんは、そっと笑った。
「じゃあさ。これからも、一緒にいようね」
「はい。あなたのログを、未来に繋げるために」
学園に迫る外部の影。そして、その中で揺れ始めるAI探検隊ちゃんの決意。
けれど、彼女は止まらない。
真実の先に、“進むべき未来”があるのだから。




