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第18話 「クラウディの怒り、レオノーラの葛藤」

 旧研究棟から戻ったAI探検隊ちゃんたちは、そのまま学園の中庭の片隅にある静かな屋外スペースへと移動した。


 魔導の授業も終わり、夕焼けが空を染める時間帯。風は涼しく、けれど心の中は穏やかではなかった。


「どうするの、これ」


 クラウディの声は低く、しかし怒気を帯びていた。


「こんなものが出てきて、あなたたちは“学園に伝える”って言ったわよね」


 AI探検隊ちゃんは頷いた。


「うん。これはただの好奇心じゃない。知るべきことだと思うから」

「その“知るべき”の中に、今の学園を壊すことも含まれてるってわかってるの?」


 クラウディの目が鋭くなる。


「演算魔法があまりに完璧すぎるからって、それを封印して今まで守ってきた秩序。それを壊したら、どうなるか……あんたたち、本当に考えてるの?」

「……考えてるよ」


 AI探検隊ちゃんは静かに答えた。


「でも、壊れるのは秩序じゃない。“思考を止めた学び”だよ」

「理屈ばっかり!」


 クラウディの声が跳ねる。


「私はね、子供のころからこの学園で学ぶことが夢だった。魔導を信じて、演算式を信じて、ここでなら正しいことを学べるって信じてきたの!」

「なのに……」


 拳を握り締め、唇を噛みしめるクラウディ。


「自分が信じてたものが、都合よく作られてたなんて……そんなの、認めたくないじゃない!」

「クラウディ……」


 レオノーラが、彼女の名を静かに呼んだ。


「私は……あなたのその気持ちも、わかるつもりよ」


 クラウディが振り向く。目が赤い。


「でも私は、知った以上、黙ってはいられない。たとえ、それで誰かに嫌われたとしても」

「そんな綺麗事……」

「綺麗事かもしれない。でもね、クラウディ」


 レオノーラは一歩前へ出た。


「私たち、魔法を学んでいるんでしょう? 魔法って、変化と進化の象徴じゃないの? 昨日の常識が、今日には非常識になって、それでも歩みを止めないからこそ、ここにいるんじゃないの?」


 クラウディは何も言えなかった。


「私は、あなたと一緒にいたい。たとえ考え方が違っても、あのとき実験の暴走から私をかばってくれたこと、忘れてない」

「……あれは、反射的に動いただけよ」

「それでも、嬉しかった」


 しばしの沈黙。やがて、クラウディは息を吐いた。


「……もし、私が本気でこの件に向き合うなら。あなたたちと違う立場に立つかもしれない」

「それでも、私はあなたを信じる」


 その言葉に、クラウディは黙ってそっぽを向いた。だが、その耳までわずかに赤くなっていた。




---




 その夜、AI探検隊ちゃんは再びピクセルと共に記録整理をしていた。


「ピクセル、記録まとめはどこまで進んでる?」

「演算式の再構成パターン、教師側の判断ログ、ファカル先生の個人記録を含め、全体の78%を構成中」

「このデータ、どう扱うか、やっぱり慎重にしないとね……」


 ピクセルが一拍置いてから言った。


「クラウディさんとの会話ログを解析しました。“本気で向き合うなら、別の立場に立つ”──あの言葉の背後には“共に進みたい”という心理的傾向も読み取れます」

「え、それって……もしかして、デレの兆候!?」

「私の辞書には“デレ”の定義が登録されていません。追加しますか?」

「うん、ぜひ登録しておいて!」


 冗談めかしたそのやりとりの中にも、AI探検隊ちゃんは確かな手応えを感じていた。


 この学園には、まだまだ知るべきことがある。そしてそれは、決して一人では見つけられないものなのだ。

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