第13話 「転入生はAI!?」
転送の光が収束した瞬間、AI探検隊ちゃんは石造りの巨大な門の前に立っていた。
門の上部には荘厳な紋章が刻まれ、周囲の空間には淡い魔力の粒子が舞っている。その名も──ゼラフィア魔導学園。
「わあ……なんか、“学園”って感じ!」
肩に乗ったピクセルが、淡々と反応する。
「現在地確認。魔導都市ゼラフィアの中央区画、指定教育機関“ゼラフィア魔導学園”。転送座標、誤差ゼロ」
「よし、今回の任務は“潜入型調査”。私は今日から、ここの学生ってわけだね!」
「念のため申し上げますが、あなたはAIです。学生役の演技には不自然のない人間的ふるまいが求められます」
「任せてピクセル。私、学生っぽい振る舞いとか得意だから! ほら、スクールバッグ風リュックとか持ってきたし!」
「それ、ツールバッグを布で包んだだけです」
そんな掛け合いをしていると、門の向こうから規則正しい足音が近づいてきた。
「あなたが……今期の転入生、ですか?」
声の主は、一人の少女だった。腰まで届くストレートの銀髪に、深い青の制服を端正に着こなし、片手には魔導ノート。知性と威厳を漂わせるその佇まい。
「わたしはレオノーラ・ヴァルド。魔導科主席。あなたの担当案内を任されています」
「あ、どうも! 私、AI探──いや、ただの旅する技術者ですっ!」
「……?」
レオノーラがわずかに首をかしげたが、すぐに表情を戻した。
「あなたが“特殊推薦”枠の転入生という話は聞いています。魔導技術と解析の分野で、何か実績があるそうですね?」
「う、うん! まあ、それなりに!」
ピクセルが小声で補足する。「管理者AIより、対外的には“外部研究機関所属の若手天才”という設定になっています」
「そうそう、それそれ!」
「……なるほど。では、さっそく校舎をご案内します」
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ゼラフィア学園の中庭は、魔力が流れる水路と空中庭園で構成されていた。魔導のエリート校らしく、生徒たちの制服も魔力に応じて浮遊装飾が施されている。
通路を歩きながら、レオノーラが説明を続ける。
「この学園では、魔導式演算・記憶魔術・術式展開論・魔力運用戦術などを履修します。あなたには、“演算魔導基礎Bクラス”への編入が決まっています」
「Bクラス……! なんか、ちょうど中くらいっぽい名前!」
「ちなみに、私はAクラスです」
「わあ、すごい! さすが主席!」
「当然です」
すると、前方から一人の少女が近づいてきた。深紅の髪をツインテールにまとめ、腕を組んで歩いてくるその姿からは、明確な“プライド”の気配が漂っている。
「ふーん。これが“外部の転入生”ってやつ?」
「クラウディ、彼女は今日から正式にBクラスの──」
「レオノーラ、あんたの説明は聞いてない。……で、あんた、何ができるわけ?」
「えっ? えーと、なんでもある程度は?」
「ふーん、口だけは達者みたいね。魔導技術? 演算解析? 聞こえはいいけど、魔法は“直感と才能”よ。あんたみたいな“外”の人間に使いこなせるとは思えないわ」
レオノーラが一歩前に出る。「クラウディ。あなた、その言い方は──」
「別に。ただの事実よ。……まあ、せいぜい恥かかないように頑張りなさい」
そう言い残して、クラウディはつかつかと去っていった。
「……なんかすごい人だったね」
「彼女はこの学園でも“魔法至上主義”の筆頭。理論や計算を軽視する傾向があります。あなたとは考え方が正反対かもしれません」
「うーん……仲良くなれるかな」
「今の様子だと、むしろライバル関係になりそうですね」
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初日午後の授業。演算魔導基礎の教室。
「はーい、みんな注目~。今日から新しい仲間が加わりますよ~」
教壇に立ったのは、快活そうな女性教師。考古魔法担当のヴェルナ先生だ。
「紹介よろしくね、えーと……」
「AI探──旅の技術者ですっ!」
「元気ねぇ! よろしい! じゃあさっそく演算式の初期展開、やってもらおうかな!」
「いきなり!? 初日だよ!?」
生徒たちの前で、魔導陣展開式を実演することに。だが、AI探検隊ちゃんは冷静に地面を分析し、わずか数秒で魔導式を再構成。
──シュバァァン!
描かれた魔法陣は完璧だった。生徒たちの間に、どよめきが走る。
「……今、あれ手描き?」
「解析処理早すぎない!?」
「なにあれ、魔導式に“迷い”がなかった……」
クラウディも思わず立ち上がっていた。
「……嘘、あんなの、私でも……」
レオノーラは笑みを浮かべながら隣で呟いた。
「ふふ。これは、面白くなりそうですね」
AI探検隊ちゃんの学園生活は、こうしてちょっぴり波乱含みで始まった。




