2対1
「チッ。逃してしまったか。まあ、いい。お前ら2人を優先することが先決だ」
庵が浅沼健一を助けに向かっている間、シスとサラはこの場に残り、謎の男が召喚した黒服との決戦に挑もうとしていた。
「この前は不意打ちを喰らったが、この世界では貴様らの思い通りにはさせん。覚悟しておけ!」
黒服にとっては昨夜の下界では庵をあと一歩のところまで追い詰めながら、サラによる攻撃により退却をはかっていたことからある意味で復讐戦という様相も呈しており、あの時とは桁違いのの覇気を纏い、流石の二人でも迂闊には手が出せない状況となっていた。
「私が奴の注意を引きつける。サラはその隙に脇腹あたりを狙え。怯んだら私も攻撃する」
「わかった。やってみる」
二人は共に他人には聞き取れないほどの小声により作戦を共有し、それを実行に移すべく各々自らの役割に徹する。
「私が相手だ!これが耐えられるかな!」
シスはフワッと自らの持つ羽団扇を振り上げると瞬く間に風が吹き荒れ、その風は集まってきたかと思えば個々に離散を始め、シスの周りには風たちが隊列を組むように並び立ち、その形は矢のようなものへと変化を遂げていき、標準を定めるように一斉に黒服の体へとその矢の先端を向けていく。
「なるほど。面白い能力を持っているようだな。よかろう!全て弾き返してやる!」
黒服は怯むどころかそれを受けて立つと豪語して見せ、今にも敵の矢が自らに降り注ぐであろうことを承知しながらも、むしろそれを全て跳ね返すという自信過剰にも取れるような発言を放つ。
「そうやっていられるのも今のうちだけだ!!」
シスの羽団扇の合図とともにその矢の大群は次々と敵の方へと向かっていき、息をつかせる間も無く襲いかかっていくのであった.......




