二度目の突入
「お。今日に限っては全員この家からスタートか」
時計の針はあの時からかなり進んであっという間に夢の世界へと誘われてしまっていた。
「まあ、余計な手間も省けたし、良しとしましょうよ」
確かにそうだな。今夜は偶然なのか必然なのか私たち3人は私の家の寝室に全員が奇跡的に集う形となり、シスの言うように皆を探す余計な手間が省けた分、あの雲の上へと行くための時間がたっぷりと確保できる。
それに、やはりこの夢の世界は一度関わればこの世界を作り上げた住人を倒さなければ脱出不可能な迷宮であることも確信した。ケンくんが再び迷い込んだことの証言と私たちが今立たされている現状によって。
「兄上、この世界に私たちが再び踏み入れたということはもしかしたら、今あの雲の上には依頼者がいる可能性は十分にある」
「兄様!それなら早く行こう!」
「そうだな。だがちょっと待ってくれ......」
私は徐にカーテンを開け、暗い中でも覚えてしまった風景の視界から私のお眼鏡に叶うものを探し当てようとする。
「あっ!あれとか良さそうだな......」
「あの。兄上。さっきから何見てるんです?早く行きましょう」
「もちろんそのつもりだ。だが、向かうのはあのビルの上だ」
私がそのビルを指差すとシスとサラもタタタッと足音を立てて窓にへばりつくように外の様子を見回す。
「ビルの上?どうしてまた?」
「この辺で一番高いビルがあれだ。エレベーターを使って最上階を目指した後に屋上に登ればこの前よりも体力を使わずにすぐに雲の上まで到達できるだろ?」
前回は3人とはバラバラだった上にシスの嵐を発動させたのも道路からで雲の上に到達するにはかなりの体力を使ったはずだし、現に時間もその分余計に経過させてしまった教訓を今活かすしかない。
幸いにしても夢の世界とはいえ、現実とはほとんど変わらないこの世界ならば現実世界でもやれそうなもので考えるならばこの方法を取るのは無難なところだろう。
「よし。そうと決まれば早速行くぞ。時間もそんなに多くあるわけじゃないからな」
私たちはそのビル目掛けて残りどのくらいあるかもわからない時間の中でひたすらにそのビルの方へと走り出す。
なんとしても今夜で決着をつけてやる。
そう意気込みながら、大急ぎで向かう足をさらに速めながら向かっていった........。




