僕の望むもの
まただ......またこの世界が僕の目の前に広がっている。
ママは確かにママのママだが、その中身は全く持っていつものママではなかった。その原因はこの世界に現れたあの謎のおじさんがしでかしたことだろう。
そして、またここに辿り着いたってことはあのおじさんもきっとどこかにいるはずだ。
なぜだろうか......僕は心のどこかであのおじさんを探しているような感じだ。僕が奥底で沈殿しながら沸々と湧き上がっていた僕の求めるママからの優しい愛情をあのおじさんが叶えてくれた。
僕はまたそれと似たような事柄をあの人に願い事として伝えようとしている。もはや心にある理性などではなく、ただ、僕の望んだものが手に入るのならそれを手に入れたいという本能的な欲望から衝動的に体が動き出してしまっている。
もう.......僕自身にもどうしようもないのかもしれない。
願いに取り込まれそうになる恐怖よりも願いを欲する心が常に体内の中で律動を繰り返し、早く早くとおじさんが到来することをこれでもかと体が求めている。
「あははは!その様子だと待たせてしまった感じかな?」
僕の耳にあの人の声が通り抜ける。
「おじさん.......」
「申し訳ないねえ。ちょっとこっちで用があったら少し遅れちゃってね。どうだい?今日も一つ何か叶えて欲しい願い事は決まったかな?」
僕はこのおじさんの全身から溢れ出てくるような優しくてポカポカとしているようなオーラに僕自身が包まれるような感覚に覆われ、心の中につっかえている願い事という名の悩みをおじさんにありのままに伝えた。
「なるほど。なるほど。だけれどその願い事でいいのかい?この世界で叶えられる願い事は1日1回だよ?」
「うん。大丈夫だよ。だって、それが叶えられることが僕にとっての幸せだから」
「そっか。申し訳ないね。野暮なことを聞いてしまって......ん?......」
するとおじさんは話の途中であるにも関わらず、後ろを振り返り、僕たちの足の下に広がる白い霧のようなものの下を覗き込むと途端に僕の方へと振り向き、僕に別の場所に移るようにと指示のようなものを出してきた。
「どうしたの?おじさん」
「少し、こっちでやることができたんだ。君は向こうの奥の方に一旦行ってくれるかい?こっちの事が済んだらすぐに迎えに行くからね」
そう言っておじさんは僕にその奥の方へと向かうように指のジェスチャーで示し、僕はその指示に唯々諾々と従い、おじさんも僕の行動に笑顔を振り向けながら振り返っていた後ろの方向へとゆっくりと歩みを進めていた。
いつになったら、おじさん戻ってくるのかな。僕は一抹の不安を抱えながら、おじさんが迎えにくると言ったその言葉だけを信じて、指定された場所へとただひたすらに進んで行っていた。




