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活路

「今日、ケンくんから朝電話があったんです」


当然のことながら私に話したい内容というのはやはり親友であるケンくんに関してのことであり、おそらく夢の世界についてのことであることも容易に想像がつく。


「まさか、また何か夢でも見たのか?」


「はい。そうなんです。また暗い世界の中に謎のおじさんが現れたらしくて......」


どうやら構図は全く同じなようだな。ケンくんこと浅沼健一くんの見る夢には必ずと言っていいほどその男が付き纏うように現れる。私たちが行動していた街の雲の上の世界ではすでにその状況が繰り広げられていたのだろう


「でも.....一つだけ今までと違うところがあるんです」


「違うところ?」


田端くんはその違うところというものを伝えるのに随分と躊躇していたが、苦渋の末にゆっくりと重たい口を開いてくれた。


「ケンくん.....もしかしたらその願い事が叶ってることに少しずつ魅了されてるというか.....取り憑かれていってるような気がするんです」


「なに?取り憑かれてるような?」


「最初に話してくれた時はケンくんもそのおじさんに対しての恐怖心みたいなものが感じられたんですけど、今日話した時には何か少しだけ嬉しそうな声色で僕に話してた気がして........」


嬉しいそうな声色か。私はそれを聞いた時、夢の中に現れたというその男が望んでいるものが何なのかがはっきりとはいかずともある程度は見えてきたような気がしていた。


「庵さん。ケンくん大丈夫ですかね......僕、何かすごい嫌な予感がして不安で.......」


まあ、無理もないだろう。それほどの親友が変わっていくような恐怖感を直に感じてしまっているのだからな。


「大丈夫だ。君は何も心配しなくていい。私たちに任せておいてくれ」


「わかりました......また何かあったら電話します!」


そう言って会話は途切れ、電話が切れた音だけが私の耳を通り抜けている。


「これはもたもたしてられないな」


今回はかなり早期の解決が望まれるだろう。今回の一件に絡んでいるその男の狙いはおそらく.......願いを叶え、その子をあの世界の虜にした上で最終的に最も従順になった状態で命を奪うことにあるのだろう。


私はすぐにリビングへと戻り、次への対策を懸命に頭の中を回転させて練り上げていた。






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