ラストチャンス
私たちは朝食を食べ終えるとリビングでの次の行動に向けた作戦会議のようなものを行うべく我々3人はソファーに座り、まずは次にあの世界に入り込んだ時のために各々の役割を明確にし、それを迅速な行動に移せるように話し合いを始めた。
「いいか。仮に昨夜と同じように現実の世界と同じ世界が再び夢で現れればとりあえずその時にシスの風で飛び立ったあの道路の脇道を集合地点としよう。また、バラバラにあの世界に降り立った時のためにな」
ただ、問題となるのはそれ以外の全く別の世界が広がった場合の話だ。夢の世界である以上そのような可能性はいくらでもあり得る。そうなってしまえば同じ轍を2度も踏んでしまう恐れがある。
「懸念としては全く別の世界に様変わりしてまた振り出しに戻ることが一番怖いことだがな」
「確かにね〜。夢だからいくらでもそういうことはあるだろうしね」
その嫌な可能性が出てくることに頭を抱えながら、机に突っ伏せるサラを横目にシスはもしかしたらその可能性があるか確かめる方法があるとつぶやいてみせる。
「今回の依頼者は友達の夢の件に関する依頼でしたよね?」
「そうだが、それがどうした?」
「あくまで、私の推測からの意見ですが」
シスが言うにはこうだ。昨夜の夢の世界にその子の友達の見た夢も繋がっているとしたら、私たちと同じように昨夜に夢を見た可能性が高い。そして、そのことを打ち明けるほどの仲の友達ならば再び見た夢のことをその子に相談することだろう。
そしてその子に相談された夢の内容が仮に今までと同じような構図の内容ならば我々が訪れたあの世界にもう一度行けることがかなりの確率で保証されるのではないかというのがシスの見立てである。
「確かにそうだな。ギリギリで行けなかったが、あの雲の上の世界が依頼された我々が行くべき世界だったとしたら、同じ内容の夢を友達が見ていればまたあの世界へ戻れる可能性は高まるな」
「へあ〜!その考えには辿り着けなかったな。流石シスだね!」
「ハハハ!そうだろ?」
「いやはや。お見それしました!」
サラからの礼賛に鼻高々と有頂天になっているシスには少し呆れるが、その提示してきた案には確かに肯首すべき点も多いのは事実である。
「兄上、電話鳴ってますよ」
シスの言うように家の固定電話が騒がしく鳴り響き、私は1人廊下を通って、その音を切るように電話を取る。
「はい。もしもし」
「あ!庵さんですか?おはようございます!僕です!」
「ああ!君か!どうした?」
噂をすればあの依頼人の少年からの電話であり、なんという絶妙なタイミングであろうかと思わされるが、一体どうしたのだろうか。
「実は先生にお伝えしなければならないことがあって.....」
これはそう言いながら本題であるその内容を私へと電話口で語り始めていた。




