別世界からの帰還
「くっ!......はぁ.....はぁ.....あれ?.......」
私は雲との間の距離はありながらも地上からはそれなりの高さを保った所から真っ逆様に落ちていき、その途中での意識喪失から醒め、気がつけば見慣れている自らの寝室に眩い朝陽の光がカーテンの隙間から無理矢理にでもこの部屋を照らそうと躍起になっている。
「もう8時か。二人はまだ寝てんのかな」
私は近くに置いてある時計を見て今の時刻を確認すると少し汗で湿ってしまった寝巻きを仰ぎながら1階へと向かう階段を降りていく。
「眩し......」
あまりの外の天気の良さに思わず声に出てしまうが、先ほどまでいた場所が冥闇に包まれたあの世界であるから多少の明るさに驚嘆させられても無理はない。
「たく。呑気にぐっすり寝てやがるなぁ」
リビングの方へと目を転じるとソファーにサラ、下に敷かれた布団にシスがおり、昨夜の配置と何一つ変わるところはなく、夢の世界での出来事はまるでなかったかのように二人ともスヤスヤと瞼をピッタリと閉じ、毛布にくるまりながら眠っている。
「酷だが、時間も時間だし起こすか」
私は二人への朝食を用意する関係もあり、二人の体を揺すり、現実の世界へと意識を戻させる。
「あ....兄様....」
「兄上.....」
「おはよう。二人とも。朝は食パンと目玉焼き、ベーコンあたりでいいか?」
二人は眠たい目を擦りながら、キッチンのテーブルの椅子に座り、私は冷凍室にある食パンを取り出し、レンジへと放り込む。
「あ!てか兄様とシス大丈夫だった?私突然意識が消えちゃって」
「ああ。その後シスも消えて大変だったぞ。おかげで地上に真っ逆様だ」
「何ですって!?大丈夫でしたか!?兄上」
「幸い地上に辿り着く前に目が覚めたからな。間一髪だ」
そうこう談笑しているうちにパンも焼き上がり、二人にイチゴやブルーベリーなどのジャムを用意しながら、焼き上がった食パンを二人の前に並べるが、私はふと気になったことを二人に聞いてみることにした。
「そういえば。二人はさっきまで寝てたが、なんで途中で消えてしまったんだろうか」
「多分兄様。私は確か夜中に一回目が覚めた記憶があるから多分それで、シスはそれに反応して起きちゃったんじゃないかな?ほら。兄様は寝室で寝てたでしょ?だから影響あんまり受けなかったんだと思うよ」
「それに兄上。あの世界はこっちよりもかなり時間の進みが遅いっぽくて私たちがあの世界から消えてからこっちの現実の世界だとかなりの時間が経ってたっぽいですからね」
そういうことだったのか。だったら次こそは機会を逃さないような措置を講じなければな。
私は次に向けた対策を練りながら、朝食作りを続けるために食材の入った冷蔵庫へと向かっていった。




