遠のく意識
「なんで......」
何故だ!なんで誰もいなくなってるんだ!
私は突然目の前に起きた光景にたじろぐと同時にこの渦巻状の風を操っていた主を失ったことで段々とその範囲を狭め、風力も細っていくのが分かり、ここで消えてしまえば私はそのまま一面に広がるコンクリートの地面へと真っ逆さまに叩き落とされるだろう。
「なんとかしなければ.........」
突っ立っていてもばかりいても仕方ない。今はこの状況を打開するために私はできうる限りのことをしようと決心し、プールの水の中を泳ぐように風の頂へとまずは向かうことにした。
「くっ!......流石シスの作った風の中だな。少し動いただけでへとへとだ......」
息は絶え絶えで体力もかなり削られたが、ひとまず風のてっぺんへと昇り、今私がいる地点の現状を確認するべく風の上に空いている穴から外の様子をざっと確認する。
「万事休すか」
私の見た現実は非情であり、雲には到底届いておらず、底の方も少しずつ少しずつ風が空気の流れに押され、塒がゆっくりと解けて自然の中へと消えていく。
私では到底風を操ることなんかできない。ならば。と最後の頼みの綱となるこのペンダントに祈りを託すことにしか私には残されていなかった。
「!!」
突然、私の目の前の視界が揺れ始める。次から次へと起こる出来事に苛立ちを覚えるが、その苛立ちの意識すらも徐々に心の中から消えていくような感覚に陥り、体の力も次第に抜けていっているのがわかり、私の体はフワッとそのまま、風の底へと落ちていき、それとともにゆっくりと私の中の意識も薄れ、しばらくしてその意識は完全に途切れてしまい、私は自分がどうなるのかすらもわからないままその世界を後にすることになった.......。




