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無差別殺人

「今から帰るよ。じゃあ」


深夜に近づき、会社帰りのサラリーマンの男は家族に帰宅する旨を電話で伝え、一人自らが乗ってきた車がある駐車場に向かう。疲労が溜まり、固まった体を肩などを回しながら、ほぐすことをしながら、黒色の軽自動車の前に立つとポケットから忙しなく車の鍵を取り出し、ピッピという音と共に車のロックが外れる。


「はぁ〜。疲れたな〜」


男は誰もいないこの閑静な駐車場で独り言をこぼしながら

車の運転席へ足を運ぼうとする。


「ん?.....なんだ?」


少し離れたところにある街頭の光の影響で巨大な影ができている。ただその影が少しおかしい。何か人影のようでありながらもその長さや大きさは人の数倍はある。


男はパッと後ろを振り向く。そこには夜の暗がりでよく見えないが、人の形をしながらもその腕は筋骨隆々の4本の腕があるのがわかり、男に近づいてくる。


「あぁぁぁ!!」


男は奇声を上げる。急いで車のドアを開けようとするが

時はすでに遅く、瞬時の速さで男の襟を掴み、駐車場の路上に放り出される。


男は腰が抜けて動けない。今はっきりとわかるのが

その丸太のような太い腕にはそれと同じ本数の日本刀のようなものを持ち、そのうちの一つがヒュッと男の前に振り下ろされる。


振り荒れる赤い吹雪とそれに彩られた刀は近くの街頭の微かな光に照らされ、煌々とした輝きを放っていた。





この近くの住宅街は普段は人の往来も少なく、大抵近くの神社で祭りなどをやる程度しか盛り上がりを見せはしない

しかし、今朝の様相はいつもの日常とは一つ違っている


「こりゃひでえな.....」


「うわぁ......」


澄み切った青空が雲の間から顔を覗かせるこの早朝に

騒々しいまでのサイレンの轟音と普段は埋まることのない路上に集まる報道陣の波や事件現場で慌ただしく動き回る警官たちの異様な場面が次々に繰り広げられる。


先程口を走らせた二人の刑事は名を古賀毅とその部下の石原正敏だった。


二人の前には推定年齢は40代、160センチ代の痩せ型の男が体をほぼ一刀両断されている状態で発見された。


「古賀さん。これってもしかしてまたバケモノ関連のやつですかね?」


「さぁ.....ただ、人間の力でここまでの殺人を犯せるかと言えば、中々難しいな」


周りには肉片らしき赤色に染まる塊がポロポロと転がり

遺体の方は骨から内臓までほぼ全てが曝け出され、野晒し状態のような酷い姿となっている。


他の刑事も現場に来るが、ある者は遺体を見た途端、強烈な吐き気に襲われ、近くにある土壌に吐き捨てるほどのものだった。


「一応、先生にも相談はしておくか」




〜安倍庵自宅〜


「ん〜」


紺の上着と鼠色のズボンの寝巻きで眠い目をゴシゴシと擦る庵は冷凍庫に入っているパンを取り出し、最近調達した最新式の電子レンジに入れ、その間にテレビのニュースを見るためにリモコンでテレビをつける。

レンジの音を傍にオレンジジュースを飲みながら、ニュースを見るという優雅な朝を過ごしている。


「んー!はぁ〜。今日も頑張るか」


開けたカーテンからは太陽の日が部屋に活気を与え

庵は腕を伸ばし、未だに残存している眠気を払い除けようとする。


チンッ!とレンジの音が鳴り響き、タタタッとパンを取り出して、程よい焦げ目がつき、いい香りが鼻に伝わりながら、上にバターをたっぷり塗り、豪快に頬張りつく。


口のまわりにつくパンのカスを一つずつ取り、もう一口を運ぼうとしたその時、テーブルのスマホが鳴り、目をそちらに移すと画面には古賀さんと記載されている。


「古賀さん?一体なんだこんな朝っぱらから」


怪訝な表情を浮かべながら、片手にあるパンを一旦皿の上に置き、スマホを手に取り、電話をとった。


「はい。もしもし」


「ああ!先生ご無沙汰しております!」


「どうしたんですか。こんな朝から」


「実は昨日殺人事件が起こりまして.....」


そう言い終える前に今も流れているニュースの中に住宅街近くの駐車場での惨殺死体のニュースがまるでその意志が伝わったかのように流れている。


「あの、もしかして惨殺死体が出たとかいうやつですか?」


「でしたら、話が早い。実はその死体がかなり変でして」


「変とは?」


「詳しくは後で説明しますので、後ほどご自宅にお伺いしても」


今日は玲香も休日であり、一人ゆっくり仕事などに励もうとしていた矢先の訪問にはやきもきはするが、その提案を受け入れることにした。


「じゃあ、昼ぐらいにそちらに伺いますのでよろしくお願いします」


そう言って電話は切れ、残っていたパンを食べ終えると

今出ているその事件についてのネット記事などを読み漁る

未だ詳しい遺体の状況や捜査の進展具合などは判然としないが、とにかく古賀一行が来るのを待つことにする。




待ち時間を庭の手入れや掃除に費やし、これから冬を迎えることを告げるかのように寒さでくしゃみが引き寄せられる。


ピンポーンとインターホンが鳴り、画面には二人の映し出される。


「どうぞ」


玄関の方へ慌ただしく向かい、閉めてある鍵をガチャガチャと開ける。


「どうも先生。ご無沙汰しております!」


柔らかく頭を下げ、まあ、中へと庵が促すと失礼しますと言いながら、靴を均等に並べ、二人は部屋に入っていった


「いつ以来でしたかね。うちにいらっしたのは」


「確か、5ヶ月ぐらい前になりますかね。ほら。石原くんが初めて来た時ぐらいの」


「はぁ〜!あれからそんなに立ちますか」


「あの時は色々とお世話になりました」


3人は思い出話に花を咲かせながらも、それが広がりを見せぬうちに古賀刑事は事件当時の状況を克明に説明し始めた。


「特段、神隠しにあったとか、霊を見たとかいう類のものではなくて、今回は普通の殺人なんですがね」


その渡された資料の事件の内容の詳細を見た感じは人間のやりそうな殺人事件と何ら変わりはない。


「我々も現場に行くまではそう思っていたんですが、遺体の斬られ方を見ると、とても普通の人間にはできないという判断に至りまして、こうして先生のご自宅をお尋ねした次第なのです」


1ページ1ページを手早くめくり、その眼球は一つ一つの文字をがっしりと正確に捉えている。


パタッと資料を閉じると、座っていた椅子から立ち上がる


「分かりました。私の方でもこの事件について調べときましょう」


「ご協力感謝します!」


二人は限界まで頭を下げ、庵はまあまあと言い、この事件を引き受けることにした。


この被害状況ならあいつを呼んだほうがいいかもな...


内心そう呟く、庵の中にはレギオとは別のもう一人の弟の姿がはっきりとその風采がゆらゆらと浮かび上がっていた







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