ここは夢の中?
「ん?......あれ?......」
目を覚ますとそこはごく普通の私の家のリビングが広がっており、私は重い体を起こしながら少し背伸びをする。
「おかしいな......確か寝室で寝た気がするんだがな」
あの後、玲香は帰らせ、私とシス、サラで夢の中に入る準備を整え、私はその後寝室に行ってリビングにいるのはむしろあの二人であるはずなのだが、その肝心の二人がどこにもいない。
「にしても体がやけに重いな.....」
特に何か異常があるわけでもないのに、肩や足に何かおもりをのせているような感覚に襲われ、肩や足を触ってみたりしたが、特に何かが覆い被さったり足を掴んできているようではない。
「まさか......本当に夢の世界にきたのか」
私は真っ先に外の世界を遮断しているカーテンを勢いよく開け、外の様子を確認する。
漆黒の闇が永遠と描かれ、家の庭も心なしかそれに侵略されたかのような色黒を伴い、明らかに普通の夜間の様相とは異なっていることがわかる。
私の中の疑惑は確信に変わり、先程の肩や足にかかっているおもりのようなものも夢の中ということなら合点がいく
夢の中では自分の思った通りに動けないこともしばしばだからだ。
問題はこの夢の中にその謎の男がいるのかというところだ。
「外に出てみるか」
私は一旦外に出て、この世界の様子を確認しようと決心した時、ガシャーン!!と私の背後で大きな物音が鳴るのが聞こえ、方向からキッチンであることがわかる。
私は急いでキッチンに向かうと割れた白い皿の破片が四方八方飛び散っており、その犯人は全身に黒い布を被り、私を見るや否や瞬時に窓を開け、逃走を図る。
「!!.....待て!!」
奴は家の壁を軽々と越え、姿を晦まし、私も遠回りではあるが、正面玄関から外に出て、跡を追う。
外もやはり、いつも通りの街の風景が広がっており、地形を知り尽くした私にとっては幸運以外の何物でもなかった。私はここから奴の逃走ルートを絞り込み、近くにある細道を使って、逃げたであろうルートに先回りをすることにする。
「おそらく、あの方向に逃げたのならここを通らざるを得ないだろう」
この細道を使えば正規のルートを使うよりも7、8分ほど早く出ることができ、地元でもそれほど多くのものに知られた道ではない。いくら夢の中でも奴と私の土地勘ならば負けるはずもない。
私は自身の小柄な体を活かし、軽々とその細道を抜け、黒服の人物が逃走したであろう道へ急いで向かうべく、足を速めていた。
 




