嫌な予感
「うわぁ〜すごい広い.......」
外観も凄まじいほどの豪邸ぶりだったけど、中に入ってみるとそれを凌駕するような広さと綺麗さで僕はただただ圧倒されるばかりであったが、さっきまで僕の話を聞いてくれたお姉さんが噂の少年のところまで案内してくれた。
「庵〜。新しい依頼人だってよ〜」
「新しい依頼人?」
リビングの奥にある壁からひょこっと顔を覗かせている人物を見て、僕は居ても立っても居られず地面を這うように瞬時にその人の前へと歩み寄った。
「あの!あなたが噂の怪奇事件を解決していたっていう安倍庵さんですか!」
実際の安倍庵は僕とさほど背丈は変わらないが、その纏うオーラはまさに大物といったような雰囲気を醸し出し、とてもそこら辺にいる同年代の少年とは別次元の人物であることは一目瞭然である。
「え?ああ.....私が安倍庵だけど.....君が依頼人かな?とりあえず、そっちに座ってて。何か飲み物でも持ってくるよ」
「はい!」
そして指定された大きなソファーに腰をかけ、庵さんはわざわざ僕のための飲み物を取りに行ってくれていた。
御多分に洩れず、ソファーのフカフカ具合も異次元であり、僕はそれをじっくり堪能しているとさっきのお姉さんも僕の隣に座り、改めて。と称して僕に自己紹介を始める。
「私、庵の助手?みたいなことやってる原田玲香って言うの。よろしくね」
「原田玲香さん?あ....僕は田端章文って言います!こちらこそよろしくお願いします!」
互いの自己紹介を言い終えているうちに庵さんは僕にこれでいいかな?とオレンジジュースを出してくれ、いただきます!と勢いよくそれに飛びつく。
「ところで、君はどういった依頼内容でここに?」
「あ.....はい。実は僕の友達の件で今日は相談に来たんです」
「友達?何かあったのか?その友達に」
「一応あったにはあったんですけど......」
僕は少し言葉がつっかえたのは確かにケンくんの身に異様なことが起きたのは事実だが、その内容自体は特にケンくんに害があるようなものではない。ただ僕が嫌な予感がするというだけで今日庵さんに相談しに来たということが言葉を詰まらせた要因だった。来てみたはいいものの具体的な害が及んでいないのにこんなふわっとした相談内容じゃ迷惑なんじゃないかと余計な感情が僕を包む。
「大丈夫。とりあえず話してみてくれ。でなきゃこっちも判断できないからな」
庵さんはそう優しく話しかけてくれて、隣の玲香さんもありのままを話せば良いと僕の背中を押してくれて、僕はゆっくりとその依頼したい内容を話し出した。




