噂の少年
「ただいま〜」
「おかえり〜」
僕はマンションの部屋の玄関を開け、帰りを伝える僕の声におそらくキッチンで皿洗いをしているであろうママが応えるように返事をくれ、僕は急いで手を洗ってパパの部屋へと駆け込んでいった。
マンションのエレベーターに乗っている時に僕はふとあることを思い出していた。パパが好んで読んでいる雑誌の表紙の中に怪奇事件を解決しているという噂の少年と題されたような記事が大々的に載せられており、僕はもしかしたらその人に頼んだらケンくんを悩ませている夢の正体も解決できるのではないかと僕は考え、早速パパの部屋に入り、その雑誌を物色しようとする。
今日はパパは仕事であり、ママも今は食器洗いで大忙しなようだからなるべく気づかれないように見つけなければならない。僕は記憶力だけはいいからその記事に載っている
噂の少年へ相談するための電話番号かもしくは事務所などの住所がわかればそれでいい。
パパはまめに雑誌の各号を丁寧に並べており、僕は一つ一つ瞬時に表紙を見ながら目当ての号を探り当てようとする。
あ!あった!これだ!
ようやく見つけた念願の表紙を持ったその雑誌を手に取り、噂の少年のことについて書かれているページを急いでめくると何かどこかの村で起きた怪奇事件についての話が書かれてあり、その噂の少年.....名前は安倍庵というのか........の事務所の住所が記載され、僕はそれを瞬時に覚えて、雑誌を元々あったところへ戻し、部屋を出る。
幸いにも明日は土曜で学校も休みだ。ママたちには明日友達と遊ぶと偽ってあの人のところへ行こう。
そうすればきっとケンくんが抱えている悩みを解決できるかもしれない。もしくは根本的に解決には導けなくても解決への糸口を示してくれる可能性もある。
記事をパラパラと見たところによればその村の事件以外にも多くの怪奇事件を解決してきたとあればそれなりの技量を持っていることは明白だ。
よし。明日行ってみよう。ここからその事務所まではバスで行けば数十分ほどの距離だ。僕はそう決心し、明日を迎えようとしていた。
◆◇◆◇
「ここがあの人の事務所か......」
一夜明け、僕は早速昨日覚えておいた事務所の住所を尋ね、今その玄関前に立っているが、想像以上の家の大きさに圧倒されながら、インターホンを見つけ、緊張を抱えながら、恐る恐るそれに触れようとする。
「あれ?どうしたの?坊や。庵に何か用事?」
すると、僕の隣から女性の声で僕に話しかけてきた人がおり、その人はあの安倍庵という少年を下の名前で呼んでおり、恐らく知り合いなのだろうと思い、僕はここに来た事情をその人に包み隠さず話した。
その女性は依頼なら中に入って、庵に話すことを促され
僕はその女性の後についていきながら、この大豪邸の事務所の中へと入っていった。




