余興
「降参?......」
「ああ。そうだ。降参だ。あんたたちのしつこさには敵いっこないな」
公園のベンチに腰を下ろしながらゼエゼエと息を荒立てるこのストーカーはいかにも人間らしい振る舞いを私たちに見せつけ、その様子は私たちを十分に困惑させることに成功し、その衝撃が返ってこの男に時間的猶予を与えてしまっていたことを気づいてはいなかった。
「大人しく言うこと聞くから少し休ませてくれ」
続け様に懇願する様子に流石の庵や人間態となった玄翠も気が引けたのかすんなり引き下がってしまう。
「フッ......バカめ。油断したな!!!」
「危ない!!」
その一瞬の気の緩みにつけ込むようにストーカーは手から紫色の矢のようなものを放ち、私は咄嗟に二人を地面に伏せさせ、その矢はそのまま真っ直ぐ直進し、公園の遊具に突き刺さり、数秒も立たないうちに空気の彼方へと消えていく。おそらくあれをまともに喰らっていたら内臓まで到達して到底助かりそうになさそうなことは私でも判断できた。こいつは自分の能力を利用して私たちが隙を見せるのを窺っていたのだろう。
「中々やるじゃん。あれを避けるなんて」
「チッ。舐められたもんだな」
「全く、玲香さんがいなければ我々は命を落としていた所でしたな。面目ない」
そして、攻撃を避けられたことに少し腹を立てたのかストーカーはこれまでの態度を一変させ、怒りを露わにしたような表情を振り向け、私たちはそれに対処することになったのであった。




