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事件の究明

私と庵は古賀さんたちが持ってくる資料を待つため、

部屋の一室で待機していた。レギオとは病院のところで分かれ、次の戦いに備えるように庵から言いつけられていた


ガチャっと扉が開き、石原さんが両手いっぱいに持ってきた資料群が机の上に置かれる。


「これが被害に遭われた人たち10人分の経歴です」


「どうも」


少し乱雑に置かれた資料たちのうちの一つを私はおもむろに手に取り、そこに書かれてある名前を見て、私は驚いた


「あれ!先輩じゃん」


「ん?どうした?」


隣で私の大きな声に庵は少し驚いた様子でこちらを見ていた。


「いや、この人私が通ってた高校の先輩の山崎さんだったから少し驚いて」


山崎さんは私が通っていた高校の1個上の先輩で入っていた部活の合唱部でよくお世話になっていた先輩だ。

こいつの下に相談にきてたなんて


「同じ高校?お前どこ高校だ?」


「え?顕業高校ってところだけど」


私は聞かれた高校名を答え、私が持っていた山崎さんの資料を見せろ!と勢いよく取り上げ、その強引さに少し苛立ちを覚えていたが、庵はそこにある他の被害者の経歴も一気に通覧して、何かに気づいたような様子を見せた。


「お前誕生日は?」


「は?いきなりなんで」


「いいから早く答えろ」


なんでいきなり誕生日なんか聞いてくるの....そう不満に思いながら誕生日の10月21日と答えた。


「古賀さん。またお願いしたいことがあるんですが」


「なんでしょうか?先生」


「顕業高校関連の事件で10月ぐらいに発生したものを調べといてもらえませんか?」


「先生がそうお願いするなら仕方ありませんな。では分かり次第メールでお送りしますので」


ありがとうございますと庵は軽く会釈をし、私はまだ庵が気づいているであろう共通点がわからずじまいのまま

早歩きで外に出るあいつを羽織っていたものを慌ててまとめながら、追いかけた。


「ちょっと!さっきのでなんかわかったわけ?」


てか、わかったなら一応職員的な立場の私にも教えろよ!

と思いながら、一体なんのことに気がついたんだろう


「お前が気づいた山崎さんがいただろ?お前もあのバケモノに襲われているということはお前も被害者全員との何か共通点を有している可能性が高い」


「山崎さんのやつで何がわかったの?」


「お前が通ってた高校の顕業高校がお前が山崎さんの資料を見てた間に私も閲覧していた相談者も顕業高校と書いてあってな。お前が山崎さんを見ていきなり騒いだ時に

少し気付いてな」


顕業高校.....私や山崎さん以外にかつて通っていた人たちが全員その高校の共通点があるってことなのか。


「それともう一つ、その後私はお前になんて聞いた?」


「え?誕生日だっけ?」


いきなり私の誕生日を訪ねてきた時はびっくりしたけど

それもまさか関係しているとか?でも山崎さんと私の誕生日は違う日付だし.....


「あれ?.....山崎さんも私と同じ10月.....」


「そう。そこだ。他の相談者ももれなく10月生まれだ。

ということはあのバケモノはかつて顕業高校出身で10月生まれという共通点の人物を襲っている」


でも、あのバケモノがなんでわざわざそんなピンポイントな人たちを.....


「おそらく、何かその高校出身者で10月に何かしらに巻き込まれた人物の怨念がそのままあのバケモノを生み出した可能性が考えられる」


怨念.....あの恐ろしいほどの形相、オーラ、狂気さは相当な恨みなどがないと生まれないはずだ。


「それに全ての被害者が受けた被害から考えられるのは

ストーカー事件に巻き込まれたことが原因でほぼ間違いないだろうな」


まだ断定はできないけど、庵の推測には私もある程度納得していた。それに今思えば普通であれば誰かが最悪の場合死んでいてもおかしくない状況でありながら、出ていないのはバケモノ....おそらく被害にあった高校生の魂が未だ

人を襲う行為に抵抗しているような気が私にはしていた


「これからどうするの?」


「一旦、お前も俺の家に来い。どっちにしろあのバケモノが出てくるのは夜だけだからな」


おそらく次の戦いでこの事件には決着はつくだろう。

初めて当たった仕事からここまで大事になっていることは冷静に考えれば、これ以降の仕事も先行が不安になるような心境だが、私も関わった以上はこんな中途半端でまた投げ出したくない。そんな思いで庵の自宅へと向かっていった。



庵の自宅に帰りつき、壁にかけてある時計を見ると時刻は

14時をまわっており、案外長い時間帰ってくるまでに外で時間を過ごしてたのか。


もうこの仕事始めてから3日ぐらい経つのか....あっという間に過ぎていく時間に驚かされるが、それほどにこの3日の間に起きたことはここで働く前には全く想像もできていなかった。


「.......」


こいつも私が来るよりもずっと前からあんなバケモノたちと戦ってきてたのか.....。強がりは見せるけど、本当は辛いこととか悲しい出来事にも今まで想像もつかないような

回数出くわしてきただろう。


最初は舐めた態度を取るただのクソガキだって思ってたけど、今の私には庵に対して一種の尊敬のようなものが芽生え始めているのがわかった。


「なんだ?そんなジッと見てきて」


「ん?別に〜」


「用もないのにジロジロみるな。気色が悪いぞ」


「はぁ〜!?もっかい言ってみろ!このクソガキ!」


軽くこいつのほっぺを引っ張り、辞めろ!と引っ張った影響でカタコトのように言い放つ庵との痴話喧嘩のような

このやり取りはもはや恒例になっている。


「離せ〜!貴様〜!」


「さっきの言葉撤回するまで離すかってんだよ!」


そんな時、リビングのテーブルの方から振動するバイブ音と着信のメロディがなり、その拍子で私が手を離すと

引っ張られた頬をスリスリと摩りながら庵はテーブルの上にあるスマホを取り、電話に出た。


「はい。もしもし......はい.....分かりました。どうもありがとうございます」


電話を切り、私は誰からの電話かと聞くと、古賀さんからの電話で調べてもらった事件の詳細だったらしい。


案外すぐ調べがついたことは驚きだが、事件は20年前以上前に起きたストーカー殺人事件で10月に起こり、犯人は数年前に服役中に亡くなり、またその被害者はやはり顕業高校の生徒で当時16歳だったそう。


「一応、今日の夜顕業高校に行くぞ。それまでにお前もしっかり休んでおけよ」


まさか久々の母校への訪問がこのような形になるとは何とも言い難いけど、私は庵に言われた通りに今日の夜に備え、今はゆっくり休むことにした。







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