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微かな音

私たちはその万引き事件のあった日にこのスーパーに出勤していた店員や常連客から何か音などを聞いていないかを聞いて回り、その中の一つの証言に何やら気になる証言を持ち出す女性の店員がいた。


「ええ。言われてみれば何か虫?というか何かシャシャシャ!みたいな音が微かに聞こえたような気はしますけど.....」


微かに聞こえたというその音はその犯人のものだったのだろうか......。いずれにせよ唯一の手掛かりとなり得たものであり、私たちは一通りの聞き込みを終えると随分と外の風景も暗くなり、今日は一旦帰宅することを選択し、また後日改めて訪ねることに決定した。


「それにしても、犯人は網羅的に満遍なく盗んでた感じだったね?兄さん」


「そうだな。盗んだものに何か規則性があるわけでもない。ましてやその量からしてとても計画性があるとも思えない」


「まあ、確かに。でも、もしかしたらかなりの万引きの手だれで、こう.....自分の力を誇示するためにやった可能性とかないかな?」


「だとしても、わざわざあそこまでの量を盗む必要性は全くないだろ?逆にそれで万引きからの逃走に悪影響の方が強いと思うがな」


むしろ、手だれの万引き犯ならもう少し慎重さを持って臨みそうなものだが、今回の犯人は何か衝動的あるいは本能的なものを感じざるを得ない。


私たちが出た午後14時からもう随分と時間が経ち、夜の風のみならず道の人気の少なさもそれを直感的に伝えている。


「ん?......兄さん。動かないで」


「どうした?急に?」


「近くに何かがいる」


私は周りを見渡すが、特にこれと言って何も見えない。

しかし、何かシャ.....シャ.....というまるでマラカスを少し振ったような音が微かながらも聞こえてくるようである。


「危ない!兄さん!」


レギオは瞬時に自身の真の姿に戻り、私の体を抱え、敵の襲撃から身を交わす。


すぐに消えてしまったが、その姿は私の記憶が正しければ鼠色の布を被っていたが、その間からはオケラのような顔をしていたことがわかった。


「クソ!あの野郎。どこ消えやがった!」


しかし、先ほど聞こえたシャ....シャ......という音は一切聞こえなくなり、あのバケモノを完全に見失ってしまった。


「.........」


レギオの方を見ると目を瞑り、瞑想を始め、何やら周囲の音を聞き分けている格好を取っている。


「そこか!!」


レギオが放った一発の光線はバケモノの体の一部に命中させることに成功したようで若干の呻き声が聞こえ、それっきりいつも通りの静かな夜道は時間が巻き戻されたように風の音だけが吹き込んでいた。


「大丈夫?兄さん。怪我ない?」


「ああ。にしても良くわかったな。敵の場所が」


「でしょ?ドルジからこの前教わったこと実践してみたんだよ。視界が見えなかったり、敵が見えなかったりした時はその微量な音も聞き逃さないようにってね」


レギオとドルジは数日前に互いに目隠しをした状態でのおもちゃの刀による遊びを庭で繰り広げていたことがあったが、その時にレギオは幾度となく負けを喫し、ドルジがなぜ勝てるのかということをレギオにアドバイスした時のことがどうやら今回の戦いで活かされたようだ。


「まさか、あの遊びがここで役に立つとはな。何が打開のヒントになり得るか。予測もできんな」


「だけど、またあいつが現れたら同じ手はもしかしたら通用しないかもしれないしね。俺も次に備えて鍛えとかなくちゃ」


そうだな。と私は返し、敵を見失った今は一旦自宅に帰宅し、次の戦いに備えなければならない。

私たちは徒歩で残り数十分となる自宅への帰路につき、未だ薄寒さを覚える中でレギオが持っていたカイロを渡してもらい、私は冷えた手を温めながら進んでいった。











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