凛との旅行
新幹線の中で私たち二人は駅弁を食べながら、外の景色を満喫し、旅行の目的地へは刻一刻と迫る。
「ねえ!泊まるホテルにさ。温泉あるからさ。夜になったら二人で入らない?私そこ結構楽しみにしてるんだよねー!」
「もちろん!わざわざ凛が私の労いの意味で誘ってくれたんだし、凛のやりたいことを優先しないと」
「いやいや!玲香のための旅行でもあるんだから!玲香も何かしたいことあったら、言いなよ?そのために用意したんだから」
すると次の到着駅のアナウンスが流れ、私たちはそれを聞くと荷物のチェックを済ませ、新幹線が停車するのを待っていた。
新幹線の扉が開き、向かい風が私たちに吹き荒れると乱れる髪を懸命に直しながら、人の波となっている階段を降る
改札を出て、タクシーを捕まえるべく、駅の外へとキャリーを引きながら、近くに泊まっているタクシーを捕まえ
目的地のホテルへと移動先を指定する。
私たちが2泊3日を想定している場所にあるホテルは凛が事前に予約を入れており、それはかなりの高級ホテルと言ってもいいぐらいのものであり、一部の部屋にはベランダに
お風呂がついており、そこから絶景を眺めながら、入浴を楽しめるというものもある。
もちろん、流石にそんな部屋には私たちは泊まるわけではないが、それでもそれなりのものであることに変わりはなく、食事でもその近くの海で採れた新鮮な海産物をそのまま使用しているらしい。
数十分タクシーを走らせるとそのホテルの入り口に差し掛かり、タクシーを止め、凛と私は折半で代金を支払いトランクに詰めていた二人分のキャリーを運転手さんに降ろしてもらい、私たちはホテルの入り口へと入っていった。
天井にはシャンデリラ、床には大理石がびっしりと敷き詰められ、凛はチェックイン済ませてくるからここで待ってて!と私は広場で凛がチェックインを終わるまで待つことになった。
待っている間も私たちと同じような旅行者のような人々がちらほらおり、カップルや子供連れがその大半を占めているようであった。やはり羽目を外すために少し高い料金を払ってでも恋人や家族のためとこよホテルに宿泊をする人が多いのだろう。
「玲香〜!終わったよ〜!はい。一応これ玲香用のカギ」
そう言われ、1枚のカードキーが私用に配られ、私たちが泊まる予定の405号室に向かうため6つもあるエレベーターのどれか一つが来るのを待つことにした。
◆◇◆◇
一方、その頃庵の方はここ最近怪異事件は鳴りを潜め、稼働の少ない日々を過ごし続けていた。
「暇だね〜兄さん〜」
ソファーでダラッーと寝そべるレギオの姿勢はまさにその言葉を体現している。
「なら、この前ドルジにリベンジするために目隠しでの特訓したらどうだ?」
「いやぁ〜。あのおもちゃの剣の目隠しでのやつ。ドルジから相手を捉える方法とか教えてもらったけど、中々できなくてさ〜。もう半分諦めてる」
「ハハハ!それじゃまたドルジに笑われるな」
それは嫌だ!と負けず嫌いを発揮するレギオを揶揄いながら私は笑みを浮かべたが、固定電話がそのタイミングで鳴り響き、私は急いで足を運ぶ。
「はいもしもし?はい。ええ。構いませんよ。わかりました。ではそちらに向かいますね」
ガチャっと受話器を戻し、誰からだった?と尋ねるレギオに出かけるぞと人間態になって、一緒に向かうことを告げる。
「出かけるぞって、なんか事件起きたの?」
「事件ではあるな。だからお前も急いで準備しろ」
「うん。わかった」
私も急いでコートなどを羽織り、レギオも瞬時に大浦律の格好を纏い、玄関のドアを開けると向かい風により扉が重たくなっており、レギオが開けるのを手伝ってくれながら、多量の風が吹き込まれる中、鍵をかけ、私たちは目的地のある場所へと急いで向かうことにした。




