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暗殺者

「あにさんたち、遅れてすまない。あとは私たちに任せて」


その玄翠の言葉に従い、私は庵を半ば持ち上げるように連れ出し、近くの鉄骨の後ろへと身を潜める。


「お前.....力が強いぞ!早く離してくれ」


庵は私の腕でジタバタと抗い、私はいつのまにか庵の体を締め上げるような強い力を加えてしまっていたらしい。


「ごめん!」


「はぁはぁ......全く.....窒息しかけたぞ」


庵に覆い被さったことといい、おそらく私の体は私の意思以上に庵を守ることへの執着心のようなものが染み込んでいることを一連の流れが私に伝えているようであった。


「だが、お前がさっき私の上に覆い被さったのは......私を守るためなんだろ?......それは感謝するよ」


唐突に発せられた庵からの何気ないその言葉に私は驚きながらも何か心の中に暖かな喜びのようなものがブワッと波に揺られる海のようにゆっくりと広がっていくのがわかった。


「あとは、あの二人がなんとかあいつを倒してくれることを願いだけだが......」


その二人.....玄翠とサラは共に覆面の人物との戦いを続けており、2対1での不利な状況であるにも関わらず互角の様相を呈しており、未だ勝利の光は見えずにいる。


「二人が来てくれなかったら、今頃私たちの命はあったかはわからんからな。それにしてもまたこのペンダントに救われたようだな」


戦況を見守りながら、庵はそのペンダントを手のひらに抱えながら、そう漏らす。

どうやら、私が庵の真意を理解していなかっただけらしく、庵がペンダントを車の中で握っていたのはそのペンダントの効力を利用しようとしていたことだったんだろう。


その結果はこのように庵の思惑通りとなったわけだ。


「でも、なんでこのペンダントは二人に庵の願いを伝えることができたんだろ.....」


「さあな。だが、どちらにせよ今は私たちにいい方向にその力が働いていることは確かだ。それに今はあっちの方が先決だ」


未だ、膠着状態は続き、サラの首元に巻き付けられている黒い蛇のようなものがムチのように攻撃するが、覆面の人物は全く動じることなく冷静にその手から伸びている灰色の光る剣の演舞によりサラの攻撃を防ぎ続ける。


「おいおい。サラ。お前の自慢の蛇のムチはそんなもんか?」


「うるさいな〜!あんたも本気出しなよ!」


「はいはい」


サラの攻撃が不調に終わると軽口を叩く玄翠にサラは苛立ちながら、敵に対し、本気を出すことを玄翠に促す。


「なら、一つ私の自慢の技を喰らわせようか」


玄翠は指を構え、その指先からは毒のような紫色の閃光を放ち、敵はそれを軽々と剣で受け止める。


「ほう。中々やるじゃないか」


「関心してる場合じゃないよ。玄翠!」


「悪い悪い。ただ、並大抵の相手ではないから注意しろ」


悠長に呟く玄翠は叱責されながらも、玄翠自身も敵の強さを侮ってはおらず、その力への脅威をサラに忠告する。


「.........」


あれ?......あの覆面のやつ、何か言葉を発した?


その時の私は聞き間違いかと思い、あまり気にはしなかったが、これまでのバケモノが発し得なかった言葉のようなものはこれから起こる異変の幕開けを告げるものであったことはこの時の私は全く意識していなかった......。













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