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ペンダントの暗示

すっかり外も夕焼が隠れそうな時間帯となり、私たちも子供たちと遊び終わり、久々に立ち寄ることも叶った庵も満足げな表情を浮かべながら、また近々寄ると言い、帰路につこうとしていた。


「あ。庵!ちょっと待って!渡したいものがあるから」


紬さんはそう言い、帰ろうと玄関から出ようとする庵を呼び止め、トタトタと疾駆し、渡したいものというやつを取りに行った。


「はい。これ」


紬さんのその手には何やらペンダントのようなものが握られており、ペンダントトップには藍色の雫のような模様をしており、それを庵の首に優しくかける


「次来る時に渡そうって思ってたの。これはいわばお守りみたいな感じ。何か困ったことがあったらこのペンダントに願いを込めれば必ずあなたを守ってくれるから」


「ありがとう。茉白さん。大事にするね」


庵はその首にかけられたペンダントをキュッと大事そうに握りしめながら、玄関を出て、手を振って送り出してくれている紬さんに手を振りかえしながら、元きた道を再び戻り始める。


あたりもすっかり暗くなってしまい、人通りもほとんどないほどに静まり返りながらも、私たちの会話がその静寂を打破するように繰り広げられていた。


「そういや、気になってたが、茉白さんとは何話してたんだ?その後やけに親密になってた気がしたが」


「ん?いや別に.....」


本当か〜?というような怪訝な顔を浮かべる庵を見ながら、私は紬さんから託された庵を支えるという決意をしたことを思い出し、密かに心でその決意を再び固めていた。


「結構時間遅いな〜。夜ご飯どうしようかな」


「なら、どこかで食べて行くか?この近くにうまいラーメン屋があるしな」


「え?まじ!?いこ!いこ!」


庵のご飯の提案に私はすぐに乗り、遊び疲れた体は一気に体力を回復し、踊り出したようにそのラーメン屋へと足を運ぼうと庵に催促し、わかりやすいやつだな.....と呆れながらもそのラーメン屋へと私を案内しようとする。


「まだ、この時間なら店も空いてるな」


「ほんと?じゃあ。早く行こ!」


庵が行くよりも先に私の足取は先へと進み、歩きながらどんな店なのかなどの情報を抽出しようとするが、ふと庵の気配がピタッと止まったような感覚があった。


「庵〜?」


「........」


庵は何やら突然立ち止まり、その表情も眉間に皺を寄せ、私ははしゃぎすぎたあまり庵を怒らせてしまったのかと思い、その場で懸命に謝罪を試みた。


「ごめん。私がはしゃぎすぎたから怒ってる?」


しかし、私の見解は全く外れていることが庵の口から証明される。


「いや、違んだ.....今誰かにつけられてる気がする」


私はすぐに庵の後ろや周りに首を回し、確認するが、一切そのような気配はなく、私は庵の勘違いではないかと推測した。


「何の気配もないけど.....気にしすぎじゃない?最近そういうバケモノも多かったし」


「いや、気のせいじゃない。何か少し毛色が違うような感じがする」


そう言って、とにかく今は普通を装うようにと庵は指示し、私もまだ状況を正確に理解できていないままその指示通りに庵と並んで進む。


「あっちに逃げるぞ」


庵が示した方向には工事現場のようなところがあり、ここならば身を隠せるようなところは多くあり、私たちは無造作ながら置かれているドラム缶の後ろに身を潜め、庵のいう何者かの追跡を回避することを優先した。


それにしても一体どうしてわかったんだろう。今に至るまで全くと言っていいほどその何者かの気配は感じられない。


「ねえ?どうして急に誰かに追われてるってわかったの?」


一応声が漏れないように耳打ちのように庵に尋ねると自身の首に掛けられるペンダントを握り、これが庵にそのことを暗示したと証言する。


この紬さんのくれたペンダントが......?


庵のいうその不可思議なペンダントの力に私は当惑するが、今はとにかくその目に見えない危機を脱することが先決だった。


しかし、その時その危機はもう目の前まで差し迫っていることに私たちはまだ気づくことはできていなかった......。















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