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バケモノvs魔物

暗い暗い工場跡地の中に髪を振り乱しているバケモノと

それとは好対照の魔物はその静寂な空気の中互いに出方を探っていようだった。


「ギイエ゛エ゛エ゛エ゛エ゛!!!」


奇声を上げるバケモノはその勢いで魔物一直線に走り

そのままジャンプをし、襲いかかった。


しかし、魔物の方もスッと足を上げ、その蹴りはバケモノの腹のところを直撃し、蹴った方向へと転がり落ちていた


「なんなのこれ....どういうこと....」


ようやく意識が戻ってきた私は二人に気づかれないように

そこから逃げようとしていた。


「おい。お前」


私がさっきまでいたドラム缶の積み重なった方向から

何やら小声が聞こえ、そこに振り向くとこっちに来いというジェスチャーをするあのクソガキが待っていた。


「あいつ....」


私は先ほどの意識も朦朧したこともすっかり忘れたように

庵のところへ走り、隠れているドラム缶の後ろの方へ

戻ってきた。


「おう。よく生きてたな。意外としぶといやつだ」


「他人事みたいに......あんたこそここに来るまで助っ人呼んでくるとか言って私に危険なこと押し付けてきたくせに」


.....たく。このマセガキがよ......あとこいつはいつのまにこの工場内に潜伏してきたの。


「で、あいつら一体なんなの?あんたはなんか知ってんの?」


あのストーカーもどきの正体があのバケモノならこいつも何かしらのバケモノ関連の情報も持っていそうだけど


「まあ、それはあっちの戦いが終わってから説明してやるからちょっと待ってろ」


庵は私の方のドラム缶から戦いの様子を覗き込み、

私も体勢を崩してその様子を観察した。


あれ....そう言えばこいつが言ってた助っ人ってやつはどこにいるんだろう?それで遅れたはずだろうけど、周りを見てもそれらしき影も形もない。まさか、ただ私を囮にして

自分は安全圏にいるというそういう魂胆だったのか....


「ヴゥ!ガァァァ!!」


相変わらずの奇声を上げながら、バケモノは魔物の方に何度も襲いかかっているが、魔物はそれをいとも簡単に全てを蹴りやパンチで跳ね除け、優勢は明らかだった。


「強....あの魔物みたいなやつ」


「当たり前だ。あいつがあんな奴に負けるはずがない」


何その口ぶり?私が魔物の強さに関心を示すと共に庵は

それは当然だという答えを返してきた。

まさか....庵の助っ人って....いやまさか。


そんな私の感情には無関係に事は進んでいき、魔物はうつ伏せるバケモノに向かって一歩一歩近づいていく。


バケモノは近づいてくる魔物に向かって砂をおもいっきり

かけ、魔物が怯んだところに蹴りを入れた。


魔物はその一瞬でもすぐに受け身の体勢を取り、蹴りの衝撃で少し後ろに下りはしたが、あまりダメージを負っているようには見えない。庵が言ったあいつは負けないという

言葉はどうやら誇大表現ではなく本当のようだ。


「ガァァ!!」


するとバケモノの方はいきなり自らの振り乱している髪の毛を数本引きちぎるとそれを同時に魔物の方めがけて飛ばした。するとその髪の毛はピアノ線のようにピンと張っている状態に変形し、魔物の腕にそれが絡みつく。


不気味な笑みを髪の間から覗かせるバケモノに対して

魔物は動揺を見せず、毅然としていた。魔物はそのまま一気に力を込め、バケモノはその勢いのまま空中を舞い、

衝撃で武器としていた髪の毛も千切れ、背中から勢いよく

魔物の背後の方へと落ちていった。


バケモノはその場にうずくまり、動きもそれに応じて鈍くなりながらもフーフーと荒い息を立てながら、それでも尚

魔物の方に無謀に見える攻撃を繰り広げた。


その度に魔物には軽くいなされ、最後の力を振り絞るようにしてバケモノはそれでも立ち上がる。


もはや最後の抵抗とばかりにその少しばかり長い爪を引っ立てて、魔物の方に目掛け、突撃した。


「そろそろ決着がつく頃か」


庵は一部始終を見た直後にそう言った。確かにその一方的展開を見せられていたら、誰だって勝負は明らかだ。


すると魔物は向かってくるバケモノに対して構える格好を取り、その右手を力一杯振り絞っているような様子が確認できた。


「ヴゥゥゥ!!」


奇声を上げ、向かっていくバケモノ。

それに対して落ち着いた構えを取り、今かと待ち受ける魔物の構図を私は固唾を飲んで見守っていた。


「ギャァァァァァ!!」


その決着は呆気ないものだった。

魔物が突き出したその拳はバケモノの下腹あたりを直撃し、バケモノはそのままその場に倒れ込んだ。


その体はみるみるうちに水蒸気のように溶けていき、

空中に分解され、その姿は跡形もなく消えてしまった。


「フッ」


戦いが終わると庵はクスッと笑い、何故か誇らしげな表情を浮かべた。


なんであんたがドヤ顔してんのよと心の中でツッコミを入れていると、そのまま隠れていたドラム缶からツカツカ

歩き出し、バケモノを倒した魔物の方へと向かった。


「え!ちょ!危ないって!」


私は必死になって止めようとした。先程あの魔物の恐ろしい力をこれでもかと思い知ったばかりだ。

あんな力が人間に使われでもしたら.....

その不安が私の中をぐるぐると駆け巡っている。


魔物は迫ってくる庵の方に視線を落とす。庵との身長の差は歴然だ。その禍々しいほどのオーラが離れていても伝わってくる。


私の頭の中はパニック状態だった。今にも襲いかかってもおかしくないような剣幕を感じる魔物を目の前に庵は進んでいる。もし魔物がいきなり襲いかかって庵に万が一のことがあったら私は後悔してもしきれない。


「よっ。ご苦労さん」


「兄さん!」


え?......そのやりとりを聞き、私は鳩が豆鉄砲を食ったような状態になる。いきなりニヤっとした砕けた表情で庵に接する魔物とそれを慰労する庵の光景がそこにはあった。


「え....えっと....これはどういう?」


私は困惑して言葉がしどろもどろになってしまう。


「ん?俺言ってなかったか?ここに来る前」


「言ってなかったかって......あっ!」


そうだ。戦いと庵のことで忘れていたけど、今この状況の整理が頭の中で組み立てられてきた。


「てことは.....助っ人っていうのは」


「おう。こいつのことだ」


そう言って片手を魔物の方に向け、私に紹介する。

魔物は打って変わってにこやかな笑顔を浮かべている。


ここから本格的に私と庵と魔物たちの関係がスタートしていくことになった。







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