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竜虎相博

次第に激しさを増す大雨は私たちが入った立体駐車場の盾により防がれ、その中は夜半ということもあり、車の数も減少傾向にあった。


「とりあえずあの車の後ろに隠れるよ」


二人の間にコンクリートの壁があり、それに遮られるようなサラの小さな声を私はなんとか汲み取り、曲がり角にある薄い水色のワゴン車の後ろに隠れ、私たちの後ろを徘徊するものの正体を掴むこととなった。


サラは纏う厚着を一生懸命に隠し、気づかれないようにと最大の配慮をし、謎の気配の正体が来るのを待つ。


ピチャ.....ピチャ.....と凍てつくアスファルトから聞こえるその音は今も振り続ける雨粒を被った者がこの駐車場の中へと侵入したことを告げるサインだった。


気づかれないようにそっと車から片目だけを覗かせ、足音のする方向へとその視界を広げる。


いた.......その姿はかつてシスが倒したあの黒炎のように全身は黒に染まっているが、あの時と違うのは何か体自体が黒というよりも黒い衣を纏っているような印象を受ける。

その黒の衣にも大粒の雨が至る所にへばりつき、一粒、また一粒とその体から滑り台を降りるように垂れていく。


次第に大きくなるその足音と共鳴するように心の中の重低音が鳴りを強め、雨粒の足音と共に近くに接近していることをこれでもかと私に伝えている。


殻に籠るように身を縮め、その内の音が外に漏れ聞こえないようにやっているとピシャリと途端にその足音は途絶え、同じく私ほどではないにしろ見つからないように身を縮めていたサラと目を見合い、互いに首を傾げる。


再び顔を外に放り出してみると周りには誰もおらず、ましてや気配すらも綺麗さっぱり消え去っている。


「あれ.....さっきまで確かにいたのに」


「気をつけて、もしかしたらただあっち側も隠れてるだけかもしれないし」


そう言われると警戒心はより一層高まり、鼓膜には風の細かな音までも敏感に反応してしまうほどに緊張感が漂い、サラも私の背中を守るようにして周りを警戒する。

前方、後方と確認するが気配は一切感じられず、すぐに脳内が安堵感で包容される。


「!!.....玲香ちゃん!!」


突然にしてサラは私の名を呼び、瞬時にその懐に私を抱き寄せ、地面に伏せる格好で彼女の着ている服が私をテントにいるように覆い尽くす。


「どうしたの!?」


私は目の前の状況を遮っているサラのコートを引き上げながら、地面と急接近していた自分の頭を擡げる。


そこには黒い衣の隙間からこちらに睥睨向ける鋭敏ながらも権柄眼を発している。


「玲香ちゃん、ここは私に任せてあそこの車の後ろに隠れてて」


私を優しく抱き起こすと近くの黒い車の後ろに隠れるように指示を出し、サラはそのまま黒い衣のバケモノと対峙する。


サラがバケモノと向かい合ったその時、サラの纏う帽子は煙のように消え、収納されている髪はワサッとウェーブを描くようにたなびき、蛇の唸りのように黒髪は波打っている。厚着の衣服も体に一体化するように埋もれ、コンパクトになり、全身は薄い黒のドレスのように変幻し、この場からようやく覗けるその横顔も一段と白くなり、瞳には真紅を宿し、バケモノもその形相に片足を引き、怯んでいる。


「このぐらいならそんなに煩わされそうにないわね」


サラもそれを感じ取り、自分よりも格下な能力であることを概算し、ドレスに覆われ、袖から僅かに出ている白い腕から何やら黒い紐状の物体を出現させ、そのまま顎をクイッとあげ、黒衣のバケモノに挑発を加える。


外では何やら雷による雷鳴も鳴り響いていたが、私にはその音が遮るほどにこの二人の闘争に意識のスポットライトが向けられていた。





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