掴む勝利
その敵に向かって猪突猛進を貫く無数の風の矢の大群は次々に黒服へと襲いかかり、それを払い除けるのに悪戦苦闘している黒服からは先程の威勢は遠く彼方へと消え去ってしまい、今や見る影もなく、その雨霰のような攻撃を防ぐことで手一杯というような醜態を晒していた。
「ハハハ!!どうした?さっきの威勢はどこへ行ってしまったのかな?」
「黙れ!!こんな小癪な技を使いおって!!こんなものではなくもっと正々堂々と戦え!天狗野郎!」
「ふん。なんとでもいえ。負け犬の遠吠えほど聞くに耐えんものはないな」
互いに罵り合いという名の言葉の矢の応酬を繰り広げるが、次第に風の矢を振り払っている敵の手は鈍り始め、その矢のうちの1本が太ももの辺りを直撃する。
「ぐっ!!」
その後は堰を切ったように次々と体のあちらこちらに矢が刺さる。普通の人間ならばその場に倒れ込み、即死するほどの矢を受けているが、未だ黒服は立ち続けていられるほどの力を有しており、一筋縄では行かない相手であることを誇示して見せている。
「はぁ.....これで勝ったと思うなよ。この程度では私に致命傷を与えるまでには遠く及ばんぞ」
しかし、シスの今の狙いは彼の息を止めることにあるわけではなかった。奴を倒すためにさらに巨大なエネルギーを要する。まともに対峙しているだけではそれを生み出せるだけの時間的余裕は生まれないのである。
そして、その時間を作り出すため、シスの指示に従い、サラはシスの風の矢による影響で視界が澱んでいるうちに敵の背後に回り込み、黒蛇により黒服の体を拘束する。
「貴様!!.......」
「シス!!今だよ!!」
「よし!」
縛り上げられている間にシスはエネルギーを十分に体に溜め込み、そのエネルギーは途端に風の光線となって発射され、サラも拘束を離し、黒服は攻撃をもろに喰らうとそのまま体はバラバラに空中に爆散を遂げた。
こうして勝利を掴み取った二人は息つく暇もなく、兄の足取りを追い、奥へと突き進んでいった。




